対話によって「台湾有事」の回避を目指す「沖縄対話プロジェクト」などが主催するシンポジウムが12日、沖縄県那覇市のタイムスホールで開かれた。稲嶺恵一元知事が基調講演し、安全保障に詳しい台湾の研究者2氏と県内の有識者ら3氏が意見交換した。緊張が高まる中でも「有事」を回避するための対話の必要性が改めて示された。
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台湾国防部傘下のシンクタンク・国防安全研究院の林彦宏(りん・げんこう)准研究員は、中国が多額を投じて軍備増強を進めていることから「有事」が起きる可能性が「高い」と懸念。一方、蔡英文政権発足後は台湾側からの挑発行為がほとんどないにも関わらず、中国の軍事的圧力が増しているとし「ボールはこちら(台湾)にはない」と訴えた。
台湾の輔仁大学の何思慎(か・ししん)教授は「共通認識があれば両岸は対話ができる」とし、政権が変われば状況は変化する可能性があるとした。ただ、「一つの中国」を巡っては台湾と中国で解釈に違いがあるとして、対話を進める上での支障になる可能性もあるとした。
沖縄側から登壇した山本章子琉球大准教授は、米軍基地や日米安保体制への抵抗感が強い沖縄が「日米のくさびになると(中国から)注目されている」と説明。沖縄の世論が「日米中どの国からも利用される存在になってはいけない」と、情報を受け取る能力を高める必要性を訴えた。
プロジェクト呼び掛け人の高嶺朝一元琉球新報社社長は「沖縄は無人島ではない。人々の暮らしは破壊しないでほしい」とワシントンや東京、北京、台北の政府関係者に伝える必要があると指摘した。
ゼロエミッションラボ沖縄の神谷美由希共同代表は市民間交流を進める重要性を強調した。
進行は前泊博盛沖縄国際大教授が務めた。
(知念征尚)
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