沖縄県などは17日、他国からの武力攻撃を想定し、宮古、八重山の先島地方の住民や観光客ら計12万人を九州へ避難させることを想定した国民保護図上訓練を県庁で初めて実施した。国や県は避難経路や輸送手段など有事の際の課題について検討を重ねていく方針を示す一方、自衛隊の南西シフトと合わせて住民が戦闘に巻き込まれる事態の想定が進むことに県内では不安や反発もある。識者は「輸送力を確保し、県外への住民避難が本当に実現できるのか」と実効性に疑問を呈する。
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訓練は県と石垣市、宮古島市、与那国町、竹富町、多良間村の5市町村の担当職員に加え、内閣官房、総務省消防庁、県警、自衛隊などから約100人がオンラインも含めて参加した。他国からの武力攻撃が開始される前の「武力攻撃予測事態」認定前後の初動対応と連携を確認した。
政府が事態認定後、県全体を要避難地域に指定し、先島地方に島外避難、本島地域に屋内退避を指示。県の避難指示に基づき、竹富町と与那国町の住民は石垣市に、多良間村の住民は宮古島市に一時集結し、両市の住民や観光客とともに九州へ避難するシミュレーションが示された。
県は船舶や航空機を用いて、通常の輸送力よりも2.36倍の1日当たり2万1784人を先島地方から九州へ移送させる試算を示した。県内外から動員した航空機を1日に52便を運航させ、船舶でも1日に約1500人を運び、6日間で九州への避難を完了させるとした。
玉城デニー知事は訓練に参加しなかったが、同日の定例会見で「武力攻撃事態や大規模テロなどの緊急事態、緊急対処事態はあってはならない非常事態だ。一方、万一発生した場合には、住民の生命、身体を守る国民保護措置の対処能力の向上を図ることも必要だ」と述べた。
(梅田正覚)
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