1学級を16人程度とする、中城村独自の少人数編成。教室確保や財源の関係で実施は村内3小学校のうち2校の小1~小3と限定的だが、不登校の減少など効果は数値に表れている。必要な人件費は全額村負担。県内で前例のない“挑戦”には反対の声もあったが、旗振り役だった浜田京介村長は「教育に『待った』なし。未来は子どもがつくる。できることから始めたかった」と話す。
村の歴史を学ぶ授業「ごさまる科」の開設でも知られる中城。浜田村政は未来の村を担う人材育成を最重要事項としてきた。独自の少人数制開始のきっかけは人口増による中城南小の開校(2013年)だった。
校区再編で中城・津覇の2校は児童数が減り、空き教室が出ていた。教育環境の向上を“一丁目一番地”の政策に掲げた浜田村長の下、通常は学校運営の課題となる空き教室問題をチャンスと捉えた。
村教育委員会も「小規模校だからできることがある」と欧州や米国の少人数学級の研究事例を集めた。
大きな課題は人件費の確保。村は「沖縄の振興に資する事業」に当たるとして県に一括交付金の申請をしたが、結果は不採択。実施には当時7人の教員を雇用しなければならず、約2600万円を村が負担する必要に迫られた。
18年の沖縄県中城村議会3月定例会。浜田村長は「細かい学習指導や多くの発表機会を与えられる」などと関連予算を提案した。議員からは財源だけでなく、一部でしか実施できないため「教育の平等性、公平性が確保できない」と批判があった。
しかし「できることから始めたい」と訴え、賛成8の反対7で予算案が可決され、挑戦が始まった。
18年度の導入から5年。長期欠席の調査では、小1は17年度から、小2は19年度からゼロが続いている。小3も21年度にゼロになった。学級担任に聞くと「子ども一人にかけられる時間が多い」「変化に気付きやすい」「朝から子どもと会話できる」ことなどが背景にあると感じているという。
3年生を対象にした学習の理解度調査で「分からない」は20年度、国語で1・5%、算数で3・1%。少人数編成を導入した18年度は国語6・4%、算数7・7%で、理解度が上がっている。子どもの平均発表回数も約2倍になるなど「子どもが活躍できるチャンスが増えた」(中城小教員)側面もある。
効果が出始めているが、財源の問題から少人数制は23年度末でいったん終了する見込みだ。浜田村長は「何としてでも続けたいが、自治体でできることには限界がある。教員不足など危機的状況にある今だからこそ、少人数制の効果を知ってもらいたい。県や国は子どもが未来をつくっていくことの重さを考え、教育に予算をつけてほしい」と訴える。
(嘉数陽)
【中城村の挑戦リンク】
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