教員不足が深刻化し、4月から一部の学校では1クラスの人数が増える見通しとなっている。そのような中で、沖縄県中城村では独自の少人数学級編成を実現させている。1学級当たりの児童数は16人程度。教室では教師が子ども一人一人に目を配り、それぞれの声や態度に細かく反応し、互いに笑顔を咲かせる。導入には反対の声も大きかった中城村独自の“挑戦”から5年。不登校は減少し、子どもたちの学習意欲が変化、働き方改革にも一定の効果が出るなど、確実に実を結び始めている。
中城村では2018年度から、中城小と津覇小の2校で16人程度を基準とする、村独自の少人数学級編成を実施している。確保できる教室の数に限りがあるため、対象は小1~小3の3学年。国の編成基準より少ない県基準(小1・2で30人、小3~中3で35人を上限)のさらに約半数の学級編成だ。国、県に補助を求めたがかなわず、村独自で年間約5千万円をかけて教員を確保してきた。
教室では教師が大きな声を出さずとも十分に届く距離で授業が進む。2月10日、津覇小2年1組では国語の授業で、児童は自分でまとめたメモを見ながら発表の練習をしていた。
「苺伽(いちか)さん、アナウンサーみたいな姿勢だね」。担任の小波津久美子教諭が小さな声で本人に伝えると、隣席の男児が気付き、まねをしてすっと背筋を伸ばした。離れた席の女の子の様子を見て、同じように姿勢を整える。別の席では、時折手元に視線を落としつつ、なるべく前を見て話そうと工夫する男の子。「勇人さん、相手によく声が届くね」。近くの子どもたちも同じように練習し始めた。いいところ探しが、教室内で次々と伝播(でんぱ)していった。
教室にいる児童は14人。教師は一人一人の様子をしっかり見ながら、子どものいいしぐさを拾って声かけし、広げていく。「ゆっくり(子どもを)見られる。子ども同士もお互いを観察しやすいみたい」(小波津教諭)。子どもが少ない分、教室のスペースにもゆとりがある。少人数だからこそ生まれる穏やかな雰囲気の学びやに、子どもたちの活発な声が響いていた。
(嘉数陽)
【中城村の挑戦リンク】
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