挑戦の成果広げること 教員時代の気持ち今でも<記者ノート>


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「ごめんね、後で話そうね」。子どもたちに囲まれ教壇で作業をしていると、物言いたげにこちらをじっと見詰める男児がいた。業務に追われ、結局「後で」は実現しなかった。こんなことが度々あった。記者になる前に小学校教員をしていた当時を思い出すと、今でも申し訳ない気持ちでいっぱいになる。受け持った学級は大抵、県の基準を下回る人数だった。子どもたちに接しようと時間をつくるようにしていたが、業務が山積して思うようにはいかなかった。

 「朝からゆっくり子どもと話ができるの」。2月、少人数学級を実現している中城村の小学校を取材した。教員を辞めて7年たつが、うらやましかった。

嘉数 陽(暮らし報道グループ)

 ネグレクトや家庭内不和による影響など、日頃から子どもたちと時間をかけて接していないと気づけないことは多い。朝からうつむいている子、お風呂に入っていないようなにおいの子―。子どもに視線を向けて、ゆっくり話をすることがどれほど大切か。

 中城の画期的な取り組みの成果は学習面だけでなく、児童と教師の穏やかな表情に如実に表れていた。業務負担の軽減にも効果があるとの現場の声にも触れた。

 理想を追求してきた5年間を振り返って浜田京介村長が「少人数学級の本当の良さは学力向上じゃない。子どもと一緒に過ごし、心の育成に時間をかけられることだ」と語ったことに光を見る思いがする。

 願わくば継続してもらいたいが、市町村の単独予算では限界があることも示した。県民の多くが教育分野の施策の充実を望んでいる。一自治体の取り組みに終わらせず、挑戦の成果を押し広げていくことこそが、保護者や教師らの求めであるはずだ。


【中城村の挑戦リンク】

▼1学級16人…村がこだわった少人数学級 中城村の挑戦㊤

▼導入から5年 数値に表れた少人数学級の効果 中城村の挑戦㊤続き

▼少人数学級で児童の意欲向上 中城村の挑戦㊥

▼少人数学級、子どもにも教員にも「ゆとり」 中城村の挑戦㊥続き

▼子どもの心育む 「国や県は教育予算増額を」 村長インタビュー 中城村の挑戦㊦