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ミシュラン「一つ星」の名店でシェフ 宜野湾出身の久高さん、本場で技磨く 沖縄の味をフランスにも<夢かなう>


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フランスのレストランでシェフを務める久高章郎さん(本人提供)

 宜野湾市出身のシェフ久高章郎(ふみお)さん(58)が務めるフランスのレストラン「ラ・ターブル・ブレッツ・カフェ」が、格付けガイドブック「ミシュランガイドフランス」で3月、一つ星を獲得した。同店はフランス北西部ブルターニュ地方カンカルにあり、和の素材とフレンチの手法を融合した斬新な料理を提供、地元住民から愛されている。沖縄の素材を取り入れた新メニューも研究中で、琉球料理にも関心を寄せる。

 久高さんは普天間高校を卒業後、「沖縄を出て違う世界を見てみたい」と大阪の辻調理師専門学校へ進学した。最初は料理にはそれほど強い関心はなかったが、在学中にフランスのリヨンにある分校で1年間研修を受け、フランス料理の奥深さに感動した。

 卒業後は上京し、都内の有名レストランを渡り歩いて腕を磨いた。20代半ばで再び渡仏。いくつもの有名店で経験を積んだ。

 フランスには50人近いスタッフを抱える店も多く、名店となると世界中から履歴書が送られてくる。フランス語がままならない日本人は、差別や嫌がらせの標的になった。

 「名前ではなく『おい、アジア人』と呼ばれていた。認めてもらえず悔しい思いをした」と語る。悔しさをばねに技術を磨き、フランスでもトップクラスの三つ星レストランで働く権利を得た。27歳のときだった。「昔と違い今では多くの店で日本人シェフが働いている。繊細な技術と細やかなサービスができる日本人は高く評価されている」と笑顔を見せる。

 現在の店は2010年にオープン。みそやしょうゆといった和の素材を使った創作料理を主に提供し、ミシュランに認定されるまでになった。

 数年に一度は宜野湾市の実家に帰る。県外、海外で暮らす中で「伝統的な琉球料理は奥が深く、文化として価値が高い」と評し、沖縄文化の魅力に改めて気づいたという。

 「日本では各国の料理が食べられるが、フランスには海外の料理を出すレストランは少ない。フランス人が積極的に地元の料理を食しているからだ」とし、「県民が琉球料理を大切にして積極的に食べることが重要ではないか」と論じた。

 久高さん自身も琉球料理への関心をさらに高めている。県産豚肉や泡盛などの素材を取り入れた新メニューも研究中だ。「琉球料理は舌の肥えたフランス人にも受け入れられるはず。県出身のシェフとして新しい料理に挑戦したい」と話し、沖縄の味をフランス人にも伝える意欲を見せた。
 (普天間伊織)


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連載「夢かなう」

 好きなこと自然体で 幼いころに見た夢、学生時代に追いかけた目標、大人になって見つけたなりたい自分。一人一人目指す場所は違っても、ひたむきに努力する姿は輝いている。夢をかなえた人たち、かなえようとしている人に焦点をあて、その思いを伝える。

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