沖縄観光に欠かせない移動手段の一つ、レンタカー。県内の新型コロナウイルス感染が落ち着く中で、観光客が乗るレンタカーも増えてきた。そのような中で、那覇空港周辺にある複数のレンタカー業者について、「バス停前が車の引き渡し場所になり迷惑している」「車道沿いに車があり事故になりそう」との情報が3月、琉球新報に寄せられた。情報提供者は、あるバス会社の運転手。現場を調べてみた。
3月中旬ごろ、那覇市内のレンタカー業者の店舗前。レンタカーが駐停車したり、客用の送迎車両やタクシーが待機したりとせわしない。
だが、その場所はバスの停留所だ。レンタカー3台とタクシー1台の計4台が駐停車する中、やってきたバスは停留所に横付けできず、車道側に止まった。バス待ちの一般利用者は歩道から車道に降り、バスまで歩いて乗り込んだ。
場所は片側2車線の道路で、1時間に複数本のバスが通るほど交通量が多い。職場と自宅を行き来するためバスを利用する70代の女性は、これまで何度も乗り降りに苦労してきたという。「とっても不便さ」と顔をしかめた。
同じ那覇市内で営業する別のレンタカー業者は3月中旬から下旬にかけて、店舗前の片側一車線の道路沿いにレンタカーを止めていた。時には複数台が駐車されていた。本紙に情報を提供したバス運転手は「バスはギリギリの幅を通り、いつ事故が起こってもおかしくない」と吐露した。
道路沿いの駐停車はただちに道交法違反とは言えないが、バスなどの停留所付近の駐停車は同法44条違反に当たる可能性がある。県警は「駐車違反に限らず、交通違反を確認した場合、必要な交通指導取り締まりを行う」とコメントした。
バス停前でレンタカー業を営むことはどうなのか。道路運送法を基にレンタカー業の許可申請を管理する沖縄総合事務局陸運事務所によると、開業場所に決まりはないという。同事務所は「よく問い合わせや苦情を受けるが、同法では駐停車について指導権限はない」と述べた。
県レンタカー協会に確認すると、バス停付近で駐停車のあった業者は非会員で、道路で駐停車があった業者は会員だった。協会は「全国レンタカー協会も店舗前の公道での貸し出しはできないと指導している」と話し、会員への注意喚起を進めている。一方で「非会員には指導権限がない」と難しさがあることを説明する。
県バス協会は「車の免許を持っていたら、駐停車禁止の場所は知っているはず。バス停などでの駐停車はご遠慮いただきたい」と求めた。
バス停付近の駐停車があった業者は「近隣に迷惑を掛けた事実はある。申し訳ない。移転する」と回答した。県警からも指導などを受けたという。道路に駐停車があった業者も「今は車を止めないようにしている」と説明した。
情報提供をしたバス運転手は「観光業を担う一事業者としてモラルを守ってほしい」と要望した。
(金良孝矢)
【関連記事】