「六甲おろし」を作詞した神奈川県出身の詩人・佐藤惣之助(そうのすけ)が、沖縄から知人に送ったはがきが約100年ぶりに“里帰り”した。那覇市久茂地の那覇文化芸術劇場なはーとで19日から始まった「琉球諸嶋風物詩集」展で展示している。はがきには当時の沖縄の様子が詩的につづられている。
佐藤は1922年に沖縄を旅し、那覇など県内各地の風景を詠んだ「琉球諸嶋風物詩集」を刊行した。はがきは同年、神奈川県横浜市の真照(しんしょう)寺の住職・雲井鱗静(くもいりんじょう)宛てに送った。沖縄に到着して間もない6月10日付。
佐藤は当時の沖縄の言葉や文化を「熟した果物のやう」、気候を「月光は秋の如く、昼は殆(ほとん)ど風もありません」と表現している。
はがきは真照寺に残されていた。展示会を企画した野村流音楽協会師範の仲村渠達也さんが寺を訪れた際、住職から見せてもらった。「直筆で、惣之助の息づかいを感じる」と話す。
このほか、企画展では「琉球諸嶋風物詩集」の詩を展示している。詩には琉歌と「かぎやで風節」などの節名(曲名)が記載されており、展示会場ではその曲も流している。はがきが書かれた日と同じ6月10日には、詩集に添えられた楽曲を演奏する公演もある。
仲村渠さんは「100年前の沖縄が詩集に閉じ込められている。詩と琉歌の取り合わせも楽しんで」と呼びかけた。
公演は6月10日午後2時からなはーと小劇場で。入場無料(要予約)。展示は同10日まで。問い合わせは、電話098(861)7810。
(田吹遥子)
【関連記事】
▼2020年は詩人・佐藤惣之助の生誕130年。出身地の川崎市で行われた展示会と沖縄との関係をひもとく
▼坂本龍一さん、小さな島の歌世界に 唄者古謝美佐子さん「涙止まらない」
▼大ヒット曲「島唄」は歌詞全てに裏の意味 恥ずかしさと怒りから生まれた一曲 音楽家・宮沢和史さん(1)<復帰半世紀 私と沖縄>