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“農業×福祉”で名護産野菜を全国へ 「ゆいまーる農業」で労働力不足を解消、耕作放棄地を使って増産図る KSファーム


“農業×福祉”で名護産野菜を全国へ 「ゆいまーる農業」で労働力不足を解消、耕作放棄地を使って増産図る KSファーム 福祉施設の利用者や、共助し合う農家と連携で名護産野菜の増産に取り組むKSファームの島袋勝博社長(前列右から4人目)ら=1日、名護市内
この記事を書いた人 琉球新報社

 名護市の農業生産法人KSファーム(島袋勝博社長)が離農によって使われなくなった耕作放棄地を活用し、名護産農作物のブランド化や増産に取り組んでいる。全国的に農業分野の労働力不足が課題となる中、福祉施設に作業を委託する「農福連携」を進めることによって生産体制を組織化し、栽培面積を拡大。福祉との連携や新規就農者を増やす取り組みによって増産体制を構築し、県外で名護産農作物の販路拡大をさらに進める考えだ。

 同法人は農作物の出荷や収穫、選別などで市内2カ所の福祉施設に作業を委託している。さらに、新規就農を目指す人に栽培方法などを伝授し、独立後は作業の共助や高額な農機具を共有し合う「ゆいまーる農業」を続けてきた。福祉の力と、農家仲間を増やす取り組みによって労働力不足を解消し、現在では、収穫などで約30人が一緒に作業をする日もあるという。

 耕作放棄地を含めた延べ約3ヘクタールの畑で育てた野菜は、大阪府の大阪いずみ市民生活協同組合(堺市、組合員世帯数55万人)や全国のスーパーなどに出荷している。現在は名護産のカボチャ100トン、オクラ50トン、トウガン30トンの出荷が可能な体制が整った。

 契約農家と販売店を結ぶ流通会社・向伸(栃木県)の荻野研一常務は「沖縄でしか栽培できない野菜もあるのでメリットはあるが、市場が限られ、生産者が出荷先を選ぶことができなかった。いい形の競争が生まれていなかった」と指摘する。KSファームの取り組みについて「さまざまな仕組みを整えることで、生産を拡大できている好事例だ」との考えを示した。

 KSファームの島袋社長は「農業がだめなのではなく、栽培した農産物をどこに売るのか、出荷先がないまま栽培することが問題だ。取引先との商談を常に取り組みながら栽培していく戦略を描いていくことが大切だ」と話した。

(池田哲平)