「牛に時間も退職金もつぎ込んで」夢は闘牛資料館! うるまの佐次田さん 沖縄


「牛に時間も退職金もつぎ込んで」夢は闘牛資料館! うるまの佐次田さん 沖縄 新たな実力牛の誕生を目標に、繁殖用の雌牛を丹精込めて育てる佐次田誠さん。モットーは「一から育て上げないと実力は花開かない」=7日、うるま市
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【うるま】120回の節目を迎える春の全島闘牛大会(一般社団法人沖縄県闘牛組合連合会主催、琉球新報社共催)が12日午後1時から、うるま市の石川多目的ドームで開催される。「闘牛のまち」うるま市では、沖縄最強牛を決めるこの日を牛主はじめ多くの闘牛ファンが待ち焦がれるが、市与那城に住む佐次田誠さん(64)もその一人。

 小学校教諭を退職後、「沖縄闘牛」を専攻テーマに冲国大大学院に進学した。教員生活の間も牛主として闘牛を育て上げた。目下の目標は闘牛資料館を開くこと。「牛に時間も退職金もつぎ込んでいるよ」と笑う。まさに牛と歩む毎日だ。

 小学校教諭の頃から、日課は変わらない。午前5時半には牛舎に行き、愛牛に餌やり。シャワーを浴びて学校へ。大学院に通う今も続いている。一番の楽しみは散歩。「牛の筋肉が動くのを感じるんだよ。信頼があれば、手綱の動きと共に動いてくれる」と身ぶり手ぶりを交えて話す。

 一般の牛主はある程度成長してから飼い始めることが多いが、佐次田さんは子牛の頃から育て上げる。その理由は「幼い頃から見続けてこそ、その牛のことを知り得る」。尊敬する牛主の友人から得た教訓だ。そうして輩出した牛が2008年、旧石川市の「闘牛候補審査会」で優等牛に輝くなど、結果を出してきた。

 大学院で闘牛をテーマに勉強しようと思ったのは、文化としての側面に光を当てないと衰退するのではないかという思いからだ。動物愛護の観点から、動物にまつわる行事が見直されている現状も気になった。現在、沖縄闘牛の成り立ち、振興に尽力した人物、闘牛牛の品種改良などを修士論文にまとめている。集めてきた資料を見てもらおうと、牛舎の一部を資料館にする改築工事にも着手した。

 うるま市闘牛連合会の副会長も務める。牛主、大学院生と三足のわらじを履く佐次田さんは「牛を飼う喜び、闘牛場で見ず知らずの人と話し合える楽しさを味わってほしい」と、闘牛の盛り上がりへ歩み続ける。

(玉城文)