美味しいから、トゲで身を守る
ウニは好き?と聞かれたら、もちろん食べるウニを想像しますね。沖縄の食用種はシラヒゲウニ。大きいと10cmを超えるまんじゅう型で、白やオレンジ色の短い棘があり、海草の生える砂地に住んでいます。一方、沖縄で一番普通に見られるのは5〜6cmのナガウニの仲間。沖縄には4種類いて、砂地に転がる岩の陰や、サンゴ礁の岩盤の穴にいます。人が食用にしないおかげか、数もたくさん見られます。
ナガウニという名は、殻が楕円形に長いから。海で拾ったナガウニの殻は確かに卵形です。ちなみに、殻の真ん中から外側に伸びる5本の筋が見えますか?ウニは体の作りが5角形の生き物で、ヒトデとも遠い親戚。ウニをひっくり返すと、真ん中に小さな白い5つの歯があり、この歯で岩に生えた海藻をかじり取って食べます。
ウニはベジタリアンの平和な生き物ですが、殻の中味は美味しいから、トゲトゲでしっかり身を守ります。でも、トゲトゲの体ってどう考えても動きにくい!岩場や砂地を歩こうにも、引っかかったり刺さったり…。その時、役に立つのがもう一つの足「管足」です。ナガウニをそっと手に乗せて水中に沈めると、棘の間から細く赤い糸がゆらゆら、にょろにょろと出てきます。これが管足で、先には小さな吸盤があります。これを棘よりも長く伸ばし、まわりにくっつけては体を引き寄せるのを繰り返して移動します。
トゲトゲとにょろにょろ、2種類の「足」を持っているウニ。食用でなくても、その面白い生き方を、ぜひ海で観察してみてくださいね。
Vol. 77 ホンナガウニ
Echinometra mathaei
● 目:ホンウニ下目 Echinidea
● 科:ナガウニ科 Echinometridae
● 属:ナガウニ属 Echinometra
撮影:ナガウニの仲間 2023年3月5日(浦添市伊奈武瀬)
ナガウニの殻 2017年8月10日(糸満市大度)
ツマジロナガウニ 2015年5月8日(浦添市カーミージー)
ホンナガウニ 2024年3月10日(久米島町奥武島)
しかたに・まゆ 東洋大、琉球大卒、福井県立大大学院修了、東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。
2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。令和4年度沖縄県環境保全功労者、ジャパンアウトドアリーダーズアワード2024特別賞。