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辛淑玉氏(反ヘイト団体「のりこえネット」共同代表)基調講演【フォーラム・沖縄ヘイトにあらがう 詳報1】


辛淑玉氏(反ヘイト団体「のりこえネット」共同代表)基調講演【フォーラム・沖縄ヘイトにあらがう 詳報1】 辛淑玉さん=2023年11月10日、那覇市の琉球新報ホール
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 琉球新報社の創刊130年記念事業・池宮城秀意記念フォーラム「沖縄ヘイトにあらがう―私たちに何ができるか」が11月10日、那覇市泉崎の琉球新報ホールで開かれた。フォーラムの様子を詳しく紹介する。

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 差別が娯楽になっている

 私は1923年の関東大震災の時に琉球人と一緒に殺された朝鮮人の子孫だ。2000年に石原慎太郎元都知事と闘った。石原慎太郎さんが自衛隊を前にして「災害が起きたら『三国人』が暴動を起こすから、そのときは自衛隊よろしく」などと発言した。朝鮮人を殺せと言った。

 「三国人」という言葉は死語だったが、公権力の地位にある人が死んだ言葉をよみがえらせた。問題はその彼が東京都民から支持されたことだ。つまり、人々が抱いていた「どうして朝鮮人を丁寧に扱わないといけないんだ」といった気持ちを取り払った。公的な人間が公に差別的な発言をして、全ての人々に対してお墨付きを与えた。

 02年の日朝首脳会談で、北朝鮮による日本人拉致事件について話し合われた。在日朝鮮人の多くはこれで日本との関係が良くなると期待を持った。しかし、ふたを開けてみるとそれは暴風だった。いわゆる朝鮮学校に通う子どもたちは数カ月の間に嫌がらせや脅迫を受けた。その時はこれまで民族団体とは全く関わらず、日本社会で日本人と生きていた人たちから、ものすごいSOSの訴えがあった。

 この後に起きたのが差別の商品化だ。あらゆるものが金になる。日本が経済的に衰退する中、差別が金になると分かった瞬間に、どんどん差別的な言説が出てきた。

 安倍晋三元首相が殺害された時が象徴的だった。殺害後、「犯人は在日朝鮮人」とネットでデマが流れた。発生から数時間後に容疑者は自衛隊員だったと報道された。その時、ネットでは「せめて(容疑者は)左翼か特定外国人スパイの反日であってほしかった。せっかく楽しんでいる時に日本人かよ」との投稿があった。つまり彼らにとって差別は娯楽だ。差別はすごい楽しい。自分にコンプレックスがあっても「俺はあいつらより上」って言える。しかも権力側と一緒にくっついていれば、なお楽しい。負けることがないからだ。最も金のかからない娯楽として差別がある。

 13年は日本にとってのターニングポイントとなる年だ。この朝鮮人に対するヘイトスピーチ、ヘイトクライムのデモは頂点にあった。彼らは「良い韓国人も悪い韓国人もどちらも殺せ」と叫んだ。ただヘイトカウンター団体も出てきて押し返すこともできた。でもその時思った。ターゲットは次にいく。それが沖縄だった。

 沖縄は朝鮮人が絶対に言われない言葉を投げかけられる。「売国奴」だ。朝鮮人は反日やゴキブリなどと言われる。(差別主義者たちは言う)「沖縄は中国に対する盾になる」「当たり前だ」。

 売国奴との言葉の根底にあるものは何か。辺野古のゲート前での警察官による「土人」発言は何か。それは「日本の植民地なのだから、犠牲になるのは当たり前だろう」「沖縄人のくせに何言ってんだ」ということだ。

 こういった差別が流れる社会で次に起きることは何か。残念なことに沖縄ではもう一度、沖縄戦をやることになる。今までは先人たち、そして今闘っている人たちの力で何とか抑えている。沖縄戦で何人も殺されたが、これは過去の話ではなく沖縄の未来の姿になるかもしれない。これをどう止めていくかが問われている。

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