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斉加尚代氏(毎日放送ディレクター)基調講演【フォーラム・沖縄ヘイトにあらがう 詳報2】


斉加尚代氏(毎日放送ディレクター)基調講演【フォーラム・沖縄ヘイトにあらがう 詳報2】 斉加尚代さん=11月10日、那覇市の琉球新報ホール
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 琉球新報社の創刊130年記念事業・池宮城秀意記念フォーラム「沖縄ヘイトにあらがう―私たちに何ができるか」が10日、那覇市泉崎の琉球新報ホールで開かれた。フォーラムの様子を詳しく紹介する。

 【フォーラム動画を見逃し配信中。詳しくは記事の末尾で。】


歴史無視 ヘイトに加担

 基地反対運動をする市民へのヘイトがあふれ出たきっかけは大阪府警機動隊員による「土人」という差別発言だ。松井一郎大阪府知事(当時)が擁護し、鶴保庸介沖縄担当相(当時)が「差別と断定できない」とした。ヘイトを止めるのではなく後押しするような発言。ヘイトやデマで基地反対運動をかき消そうという動きに危機感を覚えた。

 そこで制作したのがドキュメンタリー「沖縄さまよう木霊(こだま)」だ。反対運動の内面をメディアが伝え切れていない。だから簡単にヘイトデマに染まってしまうと考えた。「政治的でないことがあるなら教えてほしい、ものを言わないのも政治的だ」。(取材で出会った住民の言葉が)心に刻まれている。何もしないことが中立と勘違いされている状況がヘイトを広めていることにつながる。

 ヘイト・デマを流す人を取材したが、ヘイト、差別しているという自覚がない。卑劣な行いはそっちのけで自分たちの愛国行動や正義を語り続けた。

 根拠なき言説に染まる人たちを見て思うのは、言葉が薄っぺらだ。敵と味方に分ける分断の思考を持っていて、複雑な社会を複雑と捉えられず、単純化してしか考えられない稚拙さがある。

 ヘイト言説はSNSで大量拡散され、ビジネスになっていく。社会が不安に覆われているせいかもしれない。差別があるのに被害者ビジネスと主張して差別の実態、被害がなかったように思わせる言動も流通している。

 新基地建設を巡る県との集中協議(2015年)で、菅義偉官房長官(当時)が「戦後生まれで沖縄の歴史は分からない」と言った。歴史を踏まえない姿勢こそが沖縄ヘイト・デマ加速に加担している。民族差別やヘイトをする人は歴史を改ざんしたい人たちと重なり合っていることが多い。

 06年、高校日本史教科書検定において沖縄戦の「集団自決」(強制集団死)への軍関与が薄められるように書き換えられていった。加害責任を水に流し、日本軍が立派だったという美しい歴史としたい。そんな政治勢力により戦争の実相を隠す流れが生まれている。歴史改ざんの動きと沖縄ヘイトは一致している。

 メディアへの圧力は沖縄ヘイトを伴って始まった。左翼・反日・偏向と記者への不信を扇動して記者を弱めようとする。

 なぜ沖縄ヘイトが広がるか。政権与党である自民党、政治家の劣化。さらにヘイトがビジネスになるという現実。そして多くの人が無関心であるゆえにヘイトを流通させてしまう。どう対抗していくといいか。NOという強い態度を取るとともに、その構造自体を問うには教育とメディアの役割が大きい。

 自衛隊の南西シフトが新聞紙面やテレビから流れている。米軍と自衛隊を一体化して軍事増強に走る政府におもねる人たちは平和教育ですら標的にしかねない。それでも先生たち、沖縄の方たちは沖縄戦を語り継ぐだろうし、へこたれないのではないかと私は思っている。沖縄側からの歴史を語り続けることも対抗策になるはずだ。

 国が右傾化に走っていること、学問の自由さえ脅かす国家主義に傾いているとメディアが言わないといけないが、それができていない。デマやヘイト、国家ぐるみのプロパガンダに絡め取られ深刻な事態を招くと警鐘を鳴らしたい。

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