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安田浩一氏(ノンフィクションライター)パネル報告【フォーラム・沖縄ヘイトにあらがう 詳報5】


安田浩一氏(ノンフィクションライター)パネル報告【フォーラム・沖縄ヘイトにあらがう 詳報5】 安田浩一氏=11月10日、那覇市の琉球新報ホール
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 琉球新報社の創刊130年記念事業・池宮城秀意記念フォーラム「沖縄ヘイトにあらがう―私たちに何ができるか」が11月10日、那覇市泉崎の琉球新報ホールで開かれた。フォーラムの様子を詳しく紹介する。

 【フォーラム動画を見逃し配信中。詳しくは記事の末尾で】


辛苦に満ちた記憶を笑うな

 この写真は荒川の河原。ここで関東大震災の時に多くの朝鮮人が虐殺された。近くの橋では検問で誰何(すいか)し、朝鮮人と認定したら殺した。

 内務省が1913年、朝鮮人の識別に関する資料を出している。濁音の発音が困難。だから検問で「十五円五十銭」と言わせて、うまく言えなかった人を殺した。発音が困難な他の外国人や、沖縄から出稼ぎに来た人、障がいがある人も殺された。

 「不逞(ふてい)鮮人」なる言葉が3・1独立運動の後に流布され、都合の悪い人は全て不逞鮮人とされた。朝鮮人だけでなく中国人も沖縄の人も。少数だから、言葉が違うから、貧しいから。それだけのことを「不逞」とされ多くの人が殺された。

 虐殺は震災のパニックで起こったのではない。朝鮮人を不逞とする考え方が定着していて、日本社会にとって都合の悪い人、良く分からない人、貧しい人が全て不逞とされ、殺された。

 「検見川事件」では沖縄出身者が殺された。標準語をしゃべれず、地元の自警団に殺された。関東大震災で何人殺されたかは分からないが、人数なんてどうでもいい。都合の悪い人間が、気に入らない人間が殺されたという事実だけで十分だ。

 建白書で翁長(雄志)さんを先頭にデモをしている時、「売国奴」という言葉を投げかけられた。差別は連綿と続いている。
 笑うことで他者を非難、中傷するやつらが現れる。この笑いが死ぬほど嫌いだ。デマが流れ、笑いとともに差別が増大する。デマを基に差別され偏見にさらされ攻撃されている。

 笑いには差別する上で重要な効果がある。笑うことで優越的な地位を獲得したつもりになれる。何より相手の怒りを無効化できる。そして議論しなくて済む。差別者はどこでも笑う。

 この写真を見てほしい。1950年代、米国テネシー州ナッシュビルのランチカウンター闘争。当時レストランでは黒人と白人で席が分けられていた。反抗するために、黒人と支援する白人はあえて白人専用席に座る。客が馬鹿にして、頭からケチャップをかけて笑っている。そして彼ら彼女らはじっと耐える。ただし、逃げない。ひたすら座り続ける。これが非暴力の闘争だ。辺野古のゲート前も同じで、ごぼう抜きされても右翼が来ても、座り続ける。非暴力の静かな闘争だがしかし、座り込むことで権力に対する意思表示をやめない。

 笑うな。私たちの闘争を、皆さんの闘争を、そして沖縄で繰り返される闘争を、笑うな。辛苦に満ちた記憶を、笑うな。腹の底から突き上げられるような怒りを、笑うな。出自を属性を国籍やルーツを、笑うな。何度もしつこく笑うなと言い続けることに、差別と闘う一つのヒントがある。

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