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仲村涼子氏(市民団体「ニライ・カナイぬ会」共同代表)パネル報告【フォーラム・沖縄ヘイトにあらがう 詳報4】


仲村涼子氏(市民団体「ニライ・カナイぬ会」共同代表)パネル報告【フォーラム・沖縄ヘイトにあらがう 詳報4】 仲村涼子氏=11月10日、那覇市の琉球新報ホール
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琉球新報社の創刊130年記念事業・池宮城秀意記念フォーラム「沖縄ヘイトにあらがう―私たちに何ができるか」が11月10日、那覇市泉崎の琉球新報ホールで開かれた。フォーラムの様子を詳しく紹介する。

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 琉球民族も県条例の対象に

 私は日本人ではないし祖国は日本ではない。祖国は琉球国で琉球民族。県差別のない社会づくり条例が4月に施行されたが、先住民族の立場から見ると帝国リベラリズムにのっとった条例だ。

 条例ではヘイトされる対象が「人種、国籍、信条、性別、性的指向、性自認、社会的身分、出身その他」となっていて、「民族」という言葉が入っていない。国連から先住民族の権利に対する勧告が日本政府に対して何度も出ている地域で、もちろん自分が日本民族と思う人も、先住民族と自認する人もいる。でも自認する人がいるにもかかわらず、条例から除外されているのはおかしい。民族のルーツやアイデンティティーの否定だ。レイシズム条例と言っていい。

 人種差別撤廃条約の保護の対象には「人種、皮膚の色、世系または民族的もしくは種族的出身に基づく」と書いている。先住民族の権利に関する国際連合宣言は、全ての民族が自らを異なると考える権利、異なるものとして尊重される権利、同化を強要されない権利をうたっている。

 県の条例には「民族」という言葉がなく、「県民」であることを理由とする差別が明記されている。しかし県民への差別では抑圧者と被抑圧者や植民と被植民の区別がつかず、日本人からの琉球民族の存在の否定、権利の否定が見えなくなる。移住者の日本人からの差別が入っていない。私自身、市民運動の中で、反差別をうたうリベラルな移住者から「琉球・沖縄って何なの?」「琉球民族は日本政府が先住民族と認めていないから」と言われたことがある。

 県が設置した検討委員会の議事録を見ると、沖縄の人々に対する差別を語るために「国の説明との調整が必要となる」とある。なぜ加害者であり、琉球先住民族の当事者でもない国が他律的に民族の帰属や存在を決めるのか。権力者やマジョリティーが認めないと琉球民族は存在しないということか。日本人が勝手に、当事者が「権利を保障すべきだ」と言っているのに認めないのは明らかなレイシズムだ。自覚してほしい。

 さらに審議会のメンバーには国際人権法や植民地主義、先住民族などの研究者、琉球民族と自認する「当事者」はいるのか。マジョリティーや部外者が、私たちの権利やヘイトから救済されるか否かを決めることは、もはや官製ヘイトと言ってもいい。

 メディアの問題点。去年の11月に、琉球新報の記事で国連の勧告について「沖縄の人々を」とある。しかし国連勧告の英語の原文は「琉球・沖縄の人々」などと書かれているのではないか。なぜ琉球を抜いて沖縄だけを書くのかとても不思議だ。琉球民族の不可視化であり、あえて言及すると何か不都合があるのかと思う。

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