「墜落」→「不時着水」→やっぱり「墜落」 米軍オスプレイ屋久島沖墜落めぐり 日本政府、二転三転 


「墜落」→「不時着水」→やっぱり「墜落」 米軍オスプレイ屋久島沖墜落めぐり 日本政府、二転三転  記者会見する宮沢防衛副大臣=29日午後、防衛省
この記事を書いた人 Avatar photo 古堅一樹

 29日、鹿児島県屋久島沖に米軍機CV22オスプレイが墜落した。一人の死亡が確認され、機体の残骸が海上から発見されるなどしているが、日本政府発表は「墜落」か「不時着水」で二転三転した。

第一報は「墜落」(29日午後3時15分)

 事故発生から約30分後、29日午後3時15分に海上保安庁が発表した初報は「オスプレイの墜落について」と表記し、同日夕の第4報まで同じ件名で発表していた。

副大臣「不時着水」理由は…(午後6時すぎ)

 しかし、29日午後6時すぎ、政府側から「不時着水」との見解が示された。宮沢博行防衛副大臣が記者団を前に「不時着水」と説明。その理由を問われると「米側から説明を受けているが、最後の最後までパイロットは頑張っていた」と説明し「墜落」ではないとした。

副大臣発言受け、海保も修正(午後7時15分)

 宮沢副大臣の見解を受け、海上保安庁が午後7時15分に発表した第5報は「オスプレイの不時着水について」と変更されていた。

海保の広報文。「墜落」「不時着水」、「墜落」への変遷が分かる。

一夜明け国会で「墜落」(30日午前10時)

 事故から一夜明け、また見解が変わった。30日午前10時に始まった参院外交防衛委員会で、木原稔防衛相は事故について「墜落」と表現し、事故当日の29日に発表した「不時着水」から変更したのだ。

 木原氏は、米側からの連絡があったことに触れ「墜落、クラッシュ(crash)という表現であったという説明があった」と述べた。29日の時点では「不時着水、英語でいうところのアンプランド・ランディング(unplanned landing)、そういう表現であるとの説明を受けていた」と変更の理由を説明した。

米メディアは「CRASH」

 事故当日の29日夜(日本時間)の時点で、米有力紙「New York Times」、米テレビ「CNN」、米軍準機関紙の「STARS AND STRIPES(星条旗新聞」などはいずれもウェブニュースで、墜落を意味する「CRASH」と表現。また30日午前8時すぎ(日本時間)時点で、米テレビNBCやCBSでも「CRASH」との見出しで速報で報じていた。

「矮小化」狙いか 過去にも

 米軍機の重大な事故について、政府が「不時着水」などと表現し、矮小化を狙ったかのような事例は過去にもある。例えば、2016年12月に沖縄県の名護市安部で、米軍普天間飛行場に所属するMV22オスプレイが墜落した事故だ。

墜落し、破損した米軍機オスプレイ=2016年12月14日午前1時34分、名護市安部

 当時、オスプレイの機体は海の浅瀬で大破し、残がいが周辺海域へと散らばった。しかし、事故について米軍は「着水」、防衛省は「不時着水」とそれぞれ発表した。これに対し、当時の翁長雄志沖縄県知事が「機体が大破している状況から『墜落』と認識している」と表明し、矮小化した表現を使う米軍や政府へ抗議した。

海岸に墜落した普天間基地所属のオスプレイ=2016年12月14日午後1時22分、名護市安部(ヘリから撮影)