手触りや形もいろいろ、海藻の多様な世界
沖縄の海は一年中サンゴ礁!という常夏のイメージがありますが、海の中にもちゃんと季節の変化があります。特に冬、ちゃんと水温が冷えることで育ってくるのが、海藻の仲間です。
真夏には見られなかった緑や茶色の海藻たちが、12月から1月に生えてきて、2月頃に一番勢いが良くなります。浅瀬で身近に見られるのは、やっぱり緑の海藻類。沖縄で一般にアーサと呼ばれ、お汁や天ぷらにして美味しいのは、その中の1種、ヒトエグサです。ヒトエとは一重、つまり薄い緑の葉っぱが1層の細胞でできているから。だから柔らかく、口当たりが良いんです。海藻は種類により生える場所の好みがあって、ヒトエグサは岩礁の少し高い場所に生えます。薄い葉っぱが重なって濃い緑色に見えるので、目が慣れると美味しいアーサの生えている場所が一目で見分けられます。
海には、それ以外の緑の海藻もたくさんあります。大きな違いは、葉っぱがヒトエグサよりも固いこと。ぬるっと柔らかい感じのヒトエグサに比べて、他の種類はもっとしっかりした手触りで、色も明るい緑に見えます。ヒトエグサのすぐ下あたりにたくさん生えているのがアナアオサ。ヒラヒラした広い葉っぱで所々が穴あきです。ひも状の葉っぱはボウアオノリやリボンアオサ。小さなレタスみたいな形はボタンアオサ。
こうしたアオサの仲間とヒトエグサは、実は体の作りも分類もずいぶん違うんです。普段あまり気にしない海藻の形をじっくり見られるのは、3月頃までの寒い時期だけ。でも最近の温暖化で、海藻の生育が減っているように感じられます。美味しいアーサだけでなく、海藻の多様な世界をみんなで残していきたいですね。
Vol. 73 ヒトエグサ
Monostroma nitidum
● 目:ヒビミドロ目 Ulotrichales
● 科:ヒトエグサ科 Monortromataceae
● 属:ヒトエグサ属 Monostroma
写真撮影:
ヒトエグサ 2022年3月9日(浦添市 カーミージー)
アナアオサ、ボウアオノリ、ボタンアオサ 2005年3月10日(浦添市 カーミージー)
しかたに・まゆ 東洋大、琉球大卒、福井県立大大学院修了、東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。沖縄の海辺を考える「里浜22」や、温暖化対策に取り組む「ゼロエミッションラボ沖縄」でも活動中。