要配慮者施設による避難確保計画の作成が低調な背景として、作成作業の煩雑さに加え事業所の人手不足によって防災面への対応までカバーできていない現状がある。事業所のBCP(事業継続計画)について助言することがあるが、どこも作成に手が回らないし、どうしていいか分からずに困っている。防災への知識を深める時間も機会も得られていない。
一方で施設を指導する立場にある行政も十分に機能しているとは言い難い。施設側に対し相談窓口を設けたり助言する機会を増やすなどの対応が求められる。
高齢者や障がい者といった要配慮者に関する取り扱いは福祉関係部署が担っているが、今後は防災福祉課などを設けて福祉と防災双方に精通した職員を養成することも検討すべきだろう。
避難行動要支援者については、各自治体は担当部門の事務処理能力に応じて対象者を設定する傾向がある。「75歳以上の単身だけ」「身体障害者手帳の3級は除外する」など、自治体によって対応にばらつきが生じている。
個別避難計画はこれから進めていく自治体が多いが、対象者に作成のための書類を郵送しても、返送は2割程度にとどまるなど課題も残る。そもそも読んでいないだけでなく、「自分は大丈夫」と断るケースもある。
要配慮者が災害時に犠牲になるケースは多い。計画は作成して実行することが目的だ。行政が住民に対し、個別避難計画の必要性を周知する必要がある。(社会福祉士・防災士)