いなりとチキン。そんな奇抜な組み合わせがあるのか、と思うかもしれない。ところがどっこい。沖縄ではおやつや軽食として定着したソウルフードの一つだ。
地域イベント、部活動、ドライブ。さまざまな場面で登場する「いなりとチキン」コンビは、沖縄で独特の進化を遂げた。
発祥はうるま市に本店のある「丸一食品」。1966年ごろ、創業者の吉里清一さんとマサ子さん夫妻(共に故人)が、経営していた商店の一角で食堂を始めた。清一さんが暑い沖縄でも食べやすい、あっさりしたいなりを開発。塩味のフライドチキンも売っていたが、ニンニクが利いた味にしたところ、いなりとの相性が人気となった。
今ではチキンかいなりのどちらかが売り切れると、「じゃあまた来ます」と帰ってしまう客がいるほどの「絶対的コンビ」だ。
清一さん、マサ子さんの孫で丸一食品で働く緑間千晶さん(44)と、夫の智紀さん(35)は「ビーチに座っていなりとチキンを食べるのは、沖縄でしかできない体験だ。祖父母の味を守りたい」と話した。
(島袋良太)
【メモ】「沖縄いなり」は油揚げが本土のいなりより薄く、柔らかいのが特徴。フライドチキンはニンニクの香りにパン粉のかりっとした食感。現在は県内各地に「いなりとチキン」を売る店が増え、定番ローカルフードとなった。丸一食品塩屋店は電話098(974)5550。