ロシアのウクライナ侵攻で、核兵器が使われる懸念が高まっている。ロシアはベラルーシに、米国は北大西洋条約機構(NATO)加盟国にそれぞれ核を配備し威嚇を強める。ウクライナ東部ドニプロ出身で妻と息子と沖縄に避難しているピボバルチュク・ボロディミルさん(66)は「ヨーロッパは今とても危ない」と恐れを抱く。
ボロディミルさんは侵攻直後、核兵器への恐怖から、日本への避難を決めた思いもあったという。旧ソ連時代から軍医としてキャリアを積み、核兵器の恐ろしさを肌身で感じていた。「地球を恐怖に陥れる可能性がある。核兵器の禁止が必要だ」と力を込める。しかし願いとは反対にロシアはベラルーシに戦術核兵器を配備。NATOも対抗措置を取るなど、核の負の連鎖が止まらない。
ボロディミルさんの息子(37)は86年、チェルノブイリ原発事故の年に生まれた。当時、ボロディミルさんも大勢の白血病の子どもたちを支援したという。核の平和利用も、人為的なミスが取り返しのつかない事態になると実感してきた。
今、ボロディミルさんは県国際交流・人材育成財団で週1回日本語を学びながら、減量や健康に関するサロンを開く夢を抱く。ウクライナでの戦争が「あと数年は続くだろう」と見通す一方、今こそ人類が力を合わせて核兵器の禁止を進めてほしいという思いを強めている。
(中村万里子)