海面に浮かぶクラゲの仲間
海の生きものというと水中で生きている様子を想像しますが、実は海面に浮かび風に吹かれて流されながら暮らす生きものがいます。カツオノエボシやカツオノカンムリなどのクラゲの仲間です。
よく知られているカツオノエボシは、数センチの透明な餃子型の風船を持ち、風船の下に青く長い触手が縮れたようについています。ここには強い毒を持つ刺胞が隠れているので、漂着したての新鮮な個体には触らないように!でも、透明な風船部分は触っても大丈夫なんですよ。
これとよく一緒に漂着するのが、カツオノカンムリです。数センチの楕円形の盤上に、三角形の帆のようなものが立っています。盤は青く、裏側に短い触手がたくさんついています。この触手に触れると刺されますが、帆の部分はつまんでも大丈夫。青い盤には茶色っぽい色も混ざっていて、実はサンゴと同じように褐虫藻という植物プランクトンが共生しています。
カツオノカンムリが面白いのは、その帆のつき方です。たて長の楕円形の盤を上から見ると、帆はまるでガスコンロのつまみを少しひねったみたいに、右か左に角度がついています。カツオノカンムリからは左右のタイプが両方生まれますが、風を受けると異なる方向に流されるので、結果的に太平洋の西と東で違うタイプが流れ着くというのです。これは、自分たちの分布を広げるための仕掛け。まさにヨットの帆で世界を旅するクラゲというわけです。
Vol. 75 カツオノカンムリ
Velella velella
● 目:花クラゲ目 Anthoathecata
● 科:ギンカクラゲ科 Porpitidae
● 属:カツオノカンムリ属 Velella
写真撮影:
カツオノカンムリ 2010年3月29日(浦添市伊奈武瀬)、2003年4月16日(浦添市カーミージー)
カツオノエボシ 2017年1月15日(池間島)
しかたに・まゆ 東洋大、琉球大卒、福井県立大大学院修了、東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。
2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。令和4年度沖縄県環境保全功労者、ジャパンアウトドアリーダーズアワード2024特別賞。