prime

<記者コラム>「王国からの使者」 新垣若菜(政経グループ)


<記者コラム>「王国からの使者」 新垣若菜(政経グループ)
この記事を書いた人 Avatar photo 新垣 若菜

 昨年5月から福岡県の西日本新聞に出向していた。沖縄県内ならば琉球新報は「新報」だが、県外では同名があるため「琉球」と呼ばれるらしい。出向初日、出迎えてくれた上司にあたる方が、各部署で私を紹介してくれた。「琉球から来た、新垣さんです」。何だか万国津梁の鐘の音が鳴り響き、首里城を背負っているような気がした。参加したことはないが、首里文化祭の大名行列の風景まで浮かんできた。そして心の中で突っ込んだ。「私は王国からの使者かよ」

 江戸幕府へ派遣された琉球国使節団の江戸立(えどたち)さながらの気分になっていた。出身を聞かれて「首里です」と答えると、必ずと言っていいほど続く「首里城の近くに住まれていたんですね」の言葉がさらに臨場感を増す。

 ただ、残念だったのは琉球独自の文化芸能を届ける役目も担った使節団と違い、振り返れば私が西日本で読者に届けていたのは、オスプレイに始まり、PFAS問題に米軍PCB。過去もそうだっただろうが、いつでも他国に翻弄(ほんろう)されているのはやるせない。

 さて、使者の役目を終え、4月からは6年ぶりに那覇の本社に戻り、政経グループの経済班、農水担当になった。以前は中部支社にいたので王朝時代から続く闘牛の記事も多く書いてきた。今後は解体される牛の取材もすると思うと、感慨深いものがある。

 みなさま、またよろしくお願いします。