沖縄戦後64年の時を経て、西原町幸地の旧日本軍壕で出土した印鑑の持ち主である元日本兵の東端唯雄さん=故人、徳島県出身=の長男、孝さん(68)=徳島県阿波市=が7月5日、出土した現場の壕を訪れ、印鑑などの遺品と一緒に見つかった遺骨と対面した。孝さんは「壕の土を握った時、父の手を握ったような気がした」と亡き父を思い出し、涙した。
孝さんらは遺品、遺骨を発見した沖縄戦遺骨・遺品収集ボランティア団体のガマフヤー(具志堅隆松代表)の案内で収集現場を訪れた後、現場近くにある遺骨などの仮安置所で印鑑を受け取り、遺骨を骨壺に納めた。孝さんは「昨日は胸騒ぎがして眠れなかった。今は人生で初めてのすがすがしい気分。奇跡としか言えない」と喜びをかみしめ、「沖縄はまだ戦争が終わってないと感じた」と語った。
孝さんと一緒に訪れた妻の幸枝さん(67)は「亡くなった母(唯雄さんの妻)と一緒のお墓に入れたい」と涙ながらに語り、「戦争しても何もならない」と戦争の無情さを語った。
印鑑を見つけたガマフヤーの高江洲善清さんは「幸地の原野で収集作業をする予定だったが、雨が降ってきたので、以前に見つけた壕を掘ったときに見つけた。声なき声に導かれた」と語った。孝さんらは6日、64年の時を経て、父の遺品と遺骨と共に徳島への帰途につく。