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戦没者と向き合う日常、映画に 具志堅隆松さん追う 奥間勝也さん監督「骨を掘る男」 22日から公開


戦没者と向き合う日常、映画に 具志堅隆松さん追う 奥間勝也さん監督「骨を掘る男」 22日から公開 試写会の舞台あいさつで登壇した具志堅隆松さん(左)と監督の奥間勝也さん=5月29日、那覇市の桜坂劇場
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さん(70)を追ったドキュメンタリー映画「骨を掘る男」が22日から、那覇市の桜坂劇場と宮古島市のよしもと南の島パニパニシネマで上映される。出会ったことがない人の死を悼むことができるのか―。監督の奥間勝也さん(39)は具志堅さんの活動などから抱いた問いに向き合った。

 県出身の奥間さんは20代のころ、「沖縄から逃げ出したかった」と振り返る。だが、沖縄を離れた後、インドとパキスタンの国境にある地域を舞台にした映画「ラダック それぞれの物語」を撮った際、国境の町と沖縄を重ねた自分がいた。「自分の中で沖縄が軸足になっていた」

 奥間さんが沖縄戦をテーマにしたのは、遺骨収集を40年以上続ける具志堅さんに圧倒されたからだ。20~30カ所での遺骨収集に同行した。「具志堅さんは1人で土を掘っているけど、誰かに見られているような感じだった」という。遺骨収集をする具志堅さんは穏やかで、辺野古新基地建設への南部土砂の使用に反対し、ハンストなどで国や県に訴える姿と違ったとも振り返る。「戦没者と向き合う日常があるからこその怒りがある」

映画「骨を掘る男」の一場面(提供)

 もう一つのきっかけは、沖縄戦で亡くなった奥間さんの大叔母・國吉正子さんだ。大叔母の遺骨を探し、存在をたどる中で奥間さん自身も戦没者に向き合った。映画は、平和の礎(いしじ)に刻まれた名前を読み上げる企画も取り上げる。「遺骨収集も読み上げも戦没者により近づこうとする、弔う時間を能動的に持つ作業」と奥間さん。残された断片から戦没者の存在をたぐる作業は「見えないものがあるということを知ることができる」。

 映画製作に具志堅さんは「しつこかった」と苦笑いしつつも「奥間さんが撮ったものだから信用していた」と語る。完成まで5年。この間、ウクライナやパレスチナ自治区ガザ地区で戦争が起きた。県内は自衛隊の離島配備が進む。具志堅さんは「次は自分たちが戦没者になるかもしれない。戦没者への最大の慰霊は二度と戦争を起こさせないこと」と強く訴える。

 奥間さんは「具志堅さんが遺骨収集で行う“行動的慰霊”を映画で示した。能動的に関わることが大切」と語った。22日午後1時の桜坂劇場での上映終了後には奥間監督と具志堅さんの舞台あいさつがある。

  (田吹遥子)