【辺野古問題取材班】米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古新基地建設を巡り、沖縄防衛局は3日午前、大浦湾側のくい打ち試験の作業に着手した。県は事前協議が調うまで着手しないよう求めていたが、政府が作業を強行した格好となった。
クレーンは煙を上げながら動き出し、小刻みに揺れながらつるされた銅管を海中へと押し込んでいった。船の甲板に集まった多くの作業員が見守る中、銅管はゆっくりと沈下し、青く澄んだ大浦湾に突き刺さった。
新基地建設に反対する市民らが作業船がある海域に到着したのは午前9時ごろ。既に立ち上がっていた全長60~70メートルのクレーンがゆっくりと動き出した。「何か持ち上げている」。船上にいた市民の視線が一斉に作業船に注がれた。クレーンが回転し、横付けした台船から銅管を持ち上げると、市民らから「あー」とため息が漏れた。
当初、作業着手は4日とみられていた。市民らは作業開始を前に、船の様子を確認するために海域に来ていたが「不意打ち」に直面した。
銅管の直径は作業員の身長とほぼ同じ。重い銅管を持ち上げて回転させる際に大きな力を使うためか、クレーンからは時折、黒い排気が上がっていた。3日午前は2時間ほどかけて2本のくいを突き刺した。淡々と作業が進んだ。同日午後には、くいの上にふたや橋げたのようなものが乗せられるのが確認された。
くい打ち試験の作業着手は、米軍キャンプ・シュワブの搬入ゲート前に集結していた市民らにもすぐさま伝わった。炎天下の中で約30人の市民らは「くい打ちをやめろ」「私たちは諦めない」と抗議の声を上げた。午後3時の抗議活動でマイクを握った上間芳子さん(79)=那覇市=は「事前協議の対象ではないか。そもそも、ドロドロの地盤のどこにくいを打つというのか」と力を込めた。
今年5月から抗議活動に定期的に参加しているという琉球大2年の坂槙優さん(21)は「反対の声があっても『沖縄だからできるでしょう』という(政府の)姿勢が嫌だなと思う」と話した。
(池田哲平、玉寄光太)