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被害者家族に細やかな支援を 上間陽子氏(琉球大学教授)に聞く 米兵少女誘拐暴行事件 沖縄 


被害者家族に細やかな支援を 上間陽子氏(琉球大学教授)に聞く 米兵少女誘拐暴行事件 沖縄  上間陽子琉大教授
この記事を書いた人 Avatar photo 前森 智香子

 米兵による性的暴行事件の続発を受け、県内で反発が広がっている。最初に発覚したのは、米嘉手納基地所属の空軍兵の被告(25)が面識のない少女を車で自宅に連れ去り、性的暴行した誘拐暴行事件だった。空軍兵はわいせつ誘拐と不同意性交の罪で起訴され、今月12日に那覇地裁で初公判が開かれた。裁判を傍聴した琉球大の上間陽子教授に話を聞いた。


―傍聴した感想は。

 「まず感じたのは、すぐに被害を訴えることができた少女の力だ。初公判では被害に遭った少女が、帰宅直後に家族に泣きながら被害を訴えたことが明かされた。『絶対に味方になってくれる』と信頼していたからこそ話せた。そして家族も、すぐに警察に通報している」

 「本来ならすぐにこの子と家族のケアチームを立ち上げ、家族をまるごと包括的に守るべきだった。少女だけ支援するのでなく、家族がケアに専念できる状態にするのが理想だ。だが事件は隠蔽(いんぺい)され、公になったのは発生から半年後。一番必要な時期に十分な支援がされていない可能性が高い。今からでも関係機関で連携し、家族への細やかな聞き取りをベースにサポートする体制をつくるべきだ」

―若年妊産婦を支援する宿泊施設「おにわ」を開設し、代表理事を務める。性暴力を受けた女性の声を多く聞いてきた。

 「今回の事件で『少女にけがはない』との警察発表に依拠した報道があったが、違和感がある。性暴力に遭うと、精神的なダメージはもちろん、体を強くつかまれた痛みや、髪の毛を引っ張られて抜けるなど身体的にも被害を受ける。目に見える打撲痕などはないのかもしれないが、『けがはない』との表現は、性犯罪への理解に乏しく感じる」

―8月23日の第2回公判では、少女と保護者の証人尋問が予定されている。

 「被告である米兵が、否認したことによって証人尋問が必要となったことに、強い怒りを感じている。同時に少女が夏休み期間中のほとんどを、裁判での証言を抱えて過ごすだろうと思うと胸が痛い。以前、性暴力を受けて法廷で証言した経験のある女性から、『遮蔽(しゃへい)板があっても、ついたての向こうに加害者がいると思うと体ががたがた震えた』と聞いた。少女の負担がどれほどか。それでも、法廷で彼女の言葉を聞かせてもらうことで、被告の証言の問題性が明らかになるだろうし、私たちができることをしっかり探し出したい。それらによって、この子が『大人たちに守られた』と感じ回復を目指せるように、長期スパンで支援しなくてはいけない」

 (聞き手・前森智香子)