有料

沖縄の今に警鐘 避難計画「現実感乏しい」 佐道教授 国の説明は不十分 有事避ける外交を


沖縄の今に警鐘 避難計画「現実感乏しい」 佐道教授 国の説明は不十分 有事避ける外交を 1944年10月10日、沖縄本島沖で炎上する小型貨物船。米軍空母から飛び立った航空機から撮影された(県公文書館所蔵)
この記事を書いた人 Avatar photo 中村 万里子

 対馬丸撃沈から80年がたった現在、沖縄は日米の軍事強化が進み、日本政府は先島諸島の全住民を九州などに避難させる計画の策定を進める。安全保障に詳しい中京大の佐道明広教授は「実現性に大きな問題がある。大部分の人が助かるかは分からない」と指摘し、有事を避ける外交に注力すべきだと強調する。

中京大の佐道明広教授

 1944年7月、政府の命を受け、県は約10万人の県民を疎開させる方針を立て、45年3月までに187隻で約6万人が本土へ疎開した。学童疎開は44年10月1日時点で6565人が宮崎、熊本、大分県に移ったが、疎開学童の10人に1人以上が目的地にたどり着かず命を落とした。45年3月には米軍の攻撃で船舶が出航できなくなり、軍の要請を受けた県は沖縄本島の住民を北部に疎開するよう進めたが、病気や飢えが住民を襲った。

 現在、沖縄でミサイル配備が進み、武力攻撃事態を想定した国民保護計画では石垣市や宮古島市からの避難には、航空機や船舶を使い6日程度かかると見込む。

 佐道教授は「避難に時間の余裕があるのか、民間人だと攻撃されないのか、避難が1カ月で済むのかなど、国の説明は極めて現実感が乏しい」とみる。

 「有事」を前面に押し出し、軍事強化や避難準備を進める国の姿勢そのものを疑問視し、「基地は攻撃対象になる」という住民への説明が「十分ではない」とも指摘した。「一番大事なのはそういう状況にしないことだ」と強調した。 

(中村万里子)