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慰霊祭で眠る赤ん坊「私たちが伝える」 遺族3世代、記憶つなぐ 対馬丸撃沈80年 沖縄


慰霊祭で眠る赤ん坊「私たちが伝える」 遺族3世代、記憶つなぐ 対馬丸撃沈80年 沖縄 孫、ひ孫、やしゃごの3世代で参列した小波津順子さんの遺族=22日午前、那覇市若狭
この記事を書いた人 Avatar photo 宮沢 之祐

 すやすやと眠る赤ん坊も慰霊祭に参列した。対馬丸の撃沈で亡くなった小波津順子さん=当時(57)=のやしゃご、北谷町の照屋琉嘉さんは7月29日に生まれたばかり。琉嘉さんの母親の菜帆さん(36)、祖母で横浜市に住む山藤真理さん(66)、真理さんの兄小波津隆さん(74)=金武町=とともに訪れた。

 真理さんは「亡き父は、シベリアに抑留もされて、戦争を思い出したくなかったのだろう」と振り返る。撃沈された現場での海上慰霊祭の案内を見ようとしない父に参加を勧めた。結局、父は参加し「行ってよかった」と言った。父の胸の内を想像しつつ真理さんは「戦争は命を軽んじる。やってはいけない」と語った。

 菜帆さんは、生前の祖父からシベリア抑留など戦争の体験を聞かされたことがある。戦争の恐ろしさを感じた。「でも、この子は戦争の体験者の話を直接聞くことは、もうできない。その分、私たちがちゃんと伝えていきたい」。そう言って琉嘉さんを優しく抱きしめた。 

(宮沢之祐)