本島南部の設備工事会社で、会社側に無断で自身の給与を増額し、水増し分を横領したとして業務上横領の罪に問われていた元経理担当の女性被告(71)に那覇地裁(加藤貴裁判官)は12日、無罪(求刑懲役1年6月)を言い渡した。
会社側から「昇級の了承を得た」とする被告側の主張を「合理性がある」とし、有罪判決を求める検察側の主張を「犯罪の証明がない」として退けた。
判決文などによると、被告は1989年ごろから2017年12月まで、経理担当事務員として勤務。17年1月か2月ごろ、取締役から了承を得て給与計算業務の外部委託先に自身の基本給を21万3千円から30万円とするよう伝え、同2月から半年間、増額された給与を受け取った。しかし、社長がこの昇給を把握していなかったことから給与の増額分を「横領した」として23年7月、同罪で刑事告訴された。
加藤裁判官は判決で、被告が昇給の了承を得たとする取締役に社長が「信頼を寄せている」と指摘。取締役に「昇給決定権限があると認識していた」とする被告の主張を「合理的」と判示した。検察側が、被告の公判での主張が、取り調べ時の供述内容と異なっていることで「信用性」がないとしている点については、警察官から「逃げ隠れしたら逮捕する」などと言われて弁解を「変容させられた」と指摘。「合理的理由のない変遷があったと断じるには至らない」とした。
検察官は、控訴の有無について「現時点でお答えできることはない」と述べるにとどめた。
女性は「主張が認められてほっとしている」と心境を明かし、弁護人の上原智子弁護士は「本来、起訴されるべき事案ではないと考えていた。検察側は判決を受け入れてほしい」と述べた。