【最初から読む】“憧れの芸能人”に勧められ…被害男性「信じないと心保てない」
連絡方法が通信アプリLINE(ライン)に変わった直後、Fは男性の貯蓄について質問してきた。男性は2023年5月に母親から生前贈与で1200万円を受け取ったことを伝えた。すかさずFは投資することを勧めてきた。その上で「信頼できる人」としてLINE上でマネジャーを紹介したという。
「(資金を)3倍に増やす方法がある。ビットコインは知っているか」。男性は顔も知らないマネジャーの言葉に不信感を抱いたが、憧れのFの助言もあって投資を始めることを決心した。
投資が始まるとマネジャーの指示の下、指定された口座に十数回現金を振り込んだ。50万、100万、200万円と投資額も増えていった。多い時は500万円を地元のATMから振り込んだ。実在するかも分からない株も買わされた。
気づけば1千万円を投資し、資金は尽きかけていた。それでもマネジャーは「利益は出ている」と投資の継続を求めた。男性は消費者金融から400万円を借り、指示通りに振り込んだ。
一方、利益の証拠は示されず、出金を求めても手数料を請求され、1円も手元に戻ってこない状況が続いた。しびれを切らせた男性は姉に相談。姉は投資を止めるよう促したが聞き入れることはできなかった。「ここで引くことはできない」という思いが男性を追い込んでいた。結局、口論になった。
Fに姉と口論したことを伝えると、「お姉さんはあなたのことを思ってくれているんです」と優しい言葉をかけられた。男性にとってこの言葉が救いとなり、Fを信じる理由になった。しかし、借金して得た資金も底を尽き、現在は母親から生活費として月に20万円ほどの援助を受けている。
3月に最寄りの警察署で相談した際、Fらとの関係を断つことを理由に、連絡手段のLINEのアカウントを消去された。しかし、数日後には事前に伝えていたアドレスにFからメールが届いた。メールには「カカオトーク」という別の交流サイト(SNS)を使うように促され従った。
男性は投資自体は止めたものの、今でもFと連絡を取り合っている。男性の姉は「弟がいつか投資を再開するのではないかという不安が付きまとう。目を覚まして、前に進んでほしい。これが家族の願いだ」と諦めもにじませながら語る。
琉球新報はFが所属する芸能事務所に、Fと男性の関係や詐欺との関わりについて質問した。担当者はFと男性に面識がないことや、詐欺行為について否定。「弊社所属アーティストの名前をかたった詐欺行為に関して、ファンの皆さんからも多くの報告をいただいている」とし、会社としても注意喚起していることを説明した。 (名嘉一心)