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【記者解説】少女と米兵被告、双方の証言の「信用性判断」焦点に 米兵少女誘拐暴行事件 那覇地裁 沖縄


【記者解説】少女と米兵被告、双方の証言の「信用性判断」焦点に 米兵少女誘拐暴行事件 那覇地裁 沖縄 那覇地裁(資料写真)
この記事を書いた人 Avatar photo 安里 洋輔

 那覇地裁で行われた米兵少女誘拐暴行事件の第4回公判は検察側が米兵の被告に懲役7年を求刑し、結審した。少女の年齢の認識を巡り被告側は「18歳と答えた」として無罪を主張しており、地裁が少女と被告双方の証言の信用性をどう判断するかが焦点となる。

米空軍兵長の被告

 25日の論告では、無罪を主張する被告側に性犯罪被害者の偏った類型に基づいた主張もみられた。

 弁護人は、被告と少女の間に性的な行為への同意があったことを立証しようとする場面で、「傷害は認められず、衣服のほつれや抵抗の痕跡や有形力の行使」が見られないなどと指摘。抵抗の形態やその軽重で同意の有無を類推させようとする意図がうかがえた。

 2017年に愛知県で、当時19歳の実の娘に性的暴行を加えたとして準強制性交罪に問われた父親(50)=当時=の裁判では、抵抗が著しく困難な「抗拒不能」の状態だったかどうかが争われ、一審では被害者が「逃げられたはずだ」として無罪判決が言い渡された。二審で逆転有罪となったが、性犯罪被害者への思い込みや先入観が一審判決に影響した可能性は否定できない。

 被告が問われている不同意性交罪は、23年の刑法改正で新設され、旧法の「抗拒不能」の構成要件がなくなり、「同意のない性行為」が犯罪になることが明確化された。

 性犯罪被害者のさらなる救済を視野に入れた刑法改正の趣旨も踏まえ、裁判官には思い込みや先入観を排した司法判断が求められる。

 (安里洋輔)