コロナ対策、議員立法…この4年を振り返る<県議の仕事(下)2/2>


コロナ対策、議員立法…この4年を振り返る<県議の仕事(下)2/2> 那覇市街地空撮(イメージ)
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 第14回県議会議員選挙は6月7日告示、16日に投開票される。2018年10月の玉城県政誕生以降、県議会は与党多数が続いているが、今期4年間の県議会は、定数48のうち、議長を除き与党が24議席、野党・中立が23議席と、きっ抗している。知事に対する問責決議案や水道料金の値上げを巡る条例改正案など、与野党の白熱した攻防があった。4年間の県議会の主な動きを振り返る。(’24県議選取材班)

陸自訓練場などで一致【与野党超え】

 県議会では基地から派生する問題で与野党が対立する案件が多い。一方、今期4年間の県議会では自衛隊施設整備計画の白紙撤回など、与野党を超えて意見書を全会一致で可決する動きもあった。


 2022年9月定例会では、米軍嘉手納基地内での防錆整備格納庫移設を巡り、計画見直しを求める決議・意見書を全会一致で可決した。

 24年2月定例会では、うるま市石川での陸上自衛隊訓練場整備計画について白紙撤回を求める意見書を全会一致で可決した。政府が22年に閣議決定した安全保障関連3文書で南西諸島の防衛力強化の方向性を示して以降、県議会が与野党で一致し自衛隊施設新設への白紙撤回を求めたのは初めてだった。

 同定例会では鹿児島県・屋久島沖に墜落したオスプレイの事故を受け、飛行停止していたオスプレイが県内で飛行再開したことに抗議し、配備の撤回を求める決議・意見書も全会一致で可決した。県議会がオスプレイ配備の撤回などを巡り全会一致で可決するのは13年以来11年ぶり。

21年度22回、戦後最多の補正予算【コロナ対策】

 全国最悪の新型コロナウイルスの感染拡大が続き、緊急事態宣言などが相次いだ2021年度、県議会はコロナ対策費を盛り込んだ補正予算を戦後最多となる22回成立させた。

 前年度はそれまで最多となる16回、22~23年度はそれぞれ7回にとどまった。県当局と県議会はコロナ禍の20~21年度、臨時会を頻繁に開き、機動的な財政出動で感染抑止に努めた。

 県の新型コロナ対策予算は20年3月から23年3月までの約3年間で、総額7101億円計上された。この間、県と県議会は45回の補正予算を編成した。

 予算は沖縄旅行を割引する「おきなわ彩発見キャンペーン」などの需要喚起策のほか、県からの時短営業や休業要請に応じた飲食店などに支払われる協力金の財源となった。

紛糾で翌日未明の散会も【長時間審議

 県議会では時折、執行部の答弁内容や与野党間の調整を巡って紛糾、空転し、審議・休憩時間が長くなり、散会時間が夜間や翌日未明に及ぶことがある。

 2021年の2月定例会では、最終日の3月20日に新型コロナウイルス感染防止対策に関する補正予算案が可決される見通しだった。だが予算案を審議した予算特別委員会で、野党の自民会派が決議案を与党側に打診し、時短協力金の対象地域を巡る文言調整が難航。閉会日の30日のうちの議案処理が見通せなくなった。

 このため会期を1日延長し、31日の開会時刻を午前0時半に繰り上げた上で、午前3時15分からの本会議で予算案と決議を議決した。

 閉会したのは午前4時36分だった。県議会事務局によると、集計がある08年6月以降で最も遅い閉会時刻となった。

復帰後7本にとどまる【議員立法】

 県議会で審議される議案はそのほとんどが知事(県執行部)が提出したものだが、地方自治法では議員の提案による条例制定権も認められている。ただ、県議会でこうした「議員立法」によって成立した条例は、1972年の日本復帰後で7本にとどまる。

 7本のうち現在の任期の県議会で成立したのは1本だ。2021年の臨時会で、新型コロナウイルス感染拡大に伴い影響を受けている観光産業の再興に関する条例が議員発議で成立した。ここ10年をさかのぼると、県外からの埋め立て土砂の搬入を規制する条例(15年)や、県手話言語条例(16年)が含まれる。

 復帰前の県議会に当たる立法院は政策立案や予算編成権などを担い、議員間で討議し政策形成の役割を担った。議員立法の少なさは全国の自治体議会も同様の傾向がみられ、識者らからは政策立案能力の向上を課題として指摘する声がある。