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陸自配備、辺野古代執行…防衛強化で負担増<岸田政権と沖縄>1/2


陸自配備、辺野古代執行…防衛強化で負担増<岸田政権と沖縄>1/2 玉城デニー知事(左)から「平和で豊かな沖縄の実現に向けた新たな建議書」を受け取る岸田文雄首相=2022年5月10日、首相官邸
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 退陣を表明した岸田文雄首相の在任中、県内では安全保障関連3文書の決定を背景とした南西諸島の防衛力のさらなる強化が進んだ。普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設問題では、自治体事務の初の代執行に踏み切り、大浦湾側の工事に着手するなど強行姿勢を打ち出した。沖縄振興特別措置法の延長を決めた一方で、沖縄関係予算は減額傾向が続いた。21年10月の就任から約2年10カ月の岸田首相と沖縄の関わりを振り返る。

自衛隊と米軍の連携強化<基地問題>

 伝統的に自民党内のハト派と位置付けられてきた宏池会出身の岸田文雄首相だが、政権を担ってからの2年10カ月で安全保障政策を「大転換」(岸田氏)させた。防衛費の大幅な増額や相手領域を攻撃する敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有などを盛り込んだ安全保障関連3文書を決定。米軍基地が集中する沖縄では在任中、負担増強が鮮明となった。
 2022年5月の日米首脳会談でバイデン大統領に防衛費の「相当な増額」を伝達すると、国会審議を経ずに22年12月、安保関連3文書を閣議決定。3文書は県内に駐屯する陸自第15旅団の増強や補給能力の強化、米軍との連携強化など、沖縄の軍事負担を増大させる内容となった。
 辺野古新基地建設問題では、計画に反対する県との間で法廷闘争が続いた。大浦湾側の軟弱地盤改良に伴う設計変更申請を巡る代執行訴訟で県が敗訴すると、今年1月10日に大浦湾側の工事に着手した。
 今月20日にも設計変更に基づく初の本体工事として護岸工事も始める。
 自衛隊基地の整備が進んだ一方、米軍基地の返還は遅れが目立った。在任中の事例としては、沖縄の日本復帰50年の「目玉」として、米軍キャンプ瑞慶覧の一部であるロウワー・プラザ地区を緑地ひろばとして一般開放したことが挙げられる。返還で合意しているが、条件が整っていないとして日米共同使用とした。
(知念征尚、明真南斗)

予算削減で県政揺さぶる<沖縄振興>

 岸田政権下での沖縄は、南西シフトによる米軍・自衛隊の基地負担が増大する一方で、年々減少傾向にあった沖縄振興予算はさらに減額が続いた。
 岸田氏は2007年の第1次安倍改造内閣、続く福田内閣で沖縄担当相を経験。閣外に出た後も沖縄関係の与党議員でつくる議連トップを務めた経緯もあるが、首相在任中、沖縄振興に関する存在感は希薄だった。
 1998年度の約4700億円をピークに減り続けた沖縄関係予算は、福田内閣発足後の08年度には約2500億円とほぼ半減した。担当相を退いた後は、政権復帰直前の自民党が、当時の仲井真県政との連携を強化するため立ち上げた「美ら島議員連盟」の発足に携わり、初代会長に就任した。沖縄振興策を議論する党の「沖縄振興調査会」にも参加した。
 21年の第2次岸田内閣は、沖縄振興特別措置法に代わる新法制の制定作業が大詰めを迎えた。自民党内で「惰性での継続は駄目だ」という声が強い中、22年に沖振法に「5年以内の見直し」を設ける形で沖縄関係5法の改正法を成立させた。
 22年度の沖縄振興予算は10年ぶりに3千億円を下回る2684億円となった。予算の削減で、辺野古移設への反対を続ける玉城県政に揺さぶりをかける政権の狙いも透けた。インフラ整備を中心とした振興策に積極的な姿勢が顕著だった菅前政権とは対照的だった。安倍政権下で取り沙汰されるようになった基地負担と沖縄振興のリンク論は、岸田政権下で予算減と負担増が比例する段階に入った。 
 (嘉数陽)