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アップダウンへの対応磨き、目指す“東京超え”「ベスト出し尽くす」 車いすマラソン・喜納翼<沖縄からパリへ>11


アップダウンへの対応磨き、目指す“東京超え”「ベスト出し尽くす」 車いすマラソン・喜納翼<沖縄からパリへ>11 トラック練習に励む車いすマラソン(T54)の喜納翼=4日、沖縄市コザ運動公園陸上競技場
この記事を書いた人 Avatar photo 古川 峻

 車いすマラソン女子の喜納翼(T54クラス)が挑んだ4月のロンドンマラソン。道路の舗装状態が日本ほど良好ではなく勾配などが厳しいコースは、上りが苦手な喜納にとっては好タイムを出しづらい大会だ。だが今回はパリパラリンピックのコースも視野に入っていた。「アップダウンへの抵抗がなくなってきている」。自らの弱点を克服する走りを見せた。

 後方位置からスタートし、1人、また1人と前の選手に追いついて集団を膨らませる。これまで海外勢に離されていた上り坂でも脱落せず、集団を引っ張った。2021年の東京パラリンピックで課題として浮き彫りになった坂道のスプリント勝負で負けないことを証明した。

 スパートで他の選手に抜かれて12位になったが、集団を形成した5位から12位まで大きなタイム差はない。昨年、あえて勾配が厳しいハーフマラソンに多く出場し、強化を図ってきた成果を出した。「今までの大会は1人旅ばかりだった。レース展開の勉強になった」と前向きに捉える。

喜納 翼

 昨年11月の大分国際車いすマラソンや今年3月の東京マラソンはタイムも順位も満足できる内容ではなかった。理由として、東京パラ後に車いすのパーツが変わったことを挙げる。「感覚もこぎ方もかなり変わってくる」と長く試行錯誤を続けてきた。

 今季初挑戦の東京マラソンでは「道具のセッティングの大枠は見えてきた」と手応えもあった。下地隆之コーチと話し合いながら、より推進力を増すように今年からホイールを重たくした。「前に重たくなって感覚が良くなった」と好感触をつかんだ。

 東京パラ後に所属が琉球スポーツサポートに変わり、より競技に専念できる環境が整った。現在は日々のトラック練習やフィジカル強化で持久力とスピードの両輪を底上げし、週末はうるま市の海中道路でコーナリングも含めた実践的なトレーニングを積む。

 過去2年の大会結果が反映されるハイパフォーマンスランキングで世界6位につけ、パリパラリンピックの代表入りを決めた。明確な選考基準が分からないまま「目の前の一つ一つのことを丁寧に、あまりパリのことは意識せずにやってきた」とやるべきことに集中した結果だ。

 凱旋(がいせん)門などの観光地があるパリ中心部を通過するパリのコースは「ロンドンのように我慢のレースになる」とイメージする。目標は東京パラの7位を超えることだ。閉会式がある9月8日にレース本番を迎える。「走り終わった時にベストを出し尽くしたと思いたい」と自然体で臨む。

 (古川峻)


 きな・つばさ 1990年5月18日生まれ。うるま市出身、琉球スポーツサポート所属。2021年東京パラリンピックで車いすマラソン(T54)で1時間42分33秒で7位に入賞した。