発表会のレベル越えたLEAP DAY
“想い”をカタチにしたい―。そんな若者と、彼らを支える大人が結集したイベント「Ryukyufrogs 8th LEAP DAY(リープ・デー)2016」が12月11日、那覇市の沖縄セルラーパーク那覇で開かれました。「IT×○○」をテーマに、いじめや障がい、教育など社会が抱える諸課題の解決に挑む中学生から大学生までの「Ryukyufrogs」8期生(全9人)が、約半年間の成果や新サービスの概要をプレゼンテーションしたほか、国内外の第一線で活躍するスペシャルゲスト8人がビジネスの最前線を報告し、小学6年生2人は自ら開発したアプリを発表。成果発表会というレベルを越え、沖縄の未来、そして、日本の未来を切り拓く若者たちの“熱”を感じるイベントとなりました。
国内外のスペシャルゲストが結集
オープニングの「創作太鼓衆美らさ」演舞に続き、国内外のビジネスシーンをリードするスペシャルゲスト8人が登壇しました。
「ローカルからグローバルへ―地方におけるスタートアップの育て方」をテーマに登壇した「500 Startups Japan」マネージングパートナーの澤山陽平さんは、「自分たちこそが新しい世界をつくっていける」という信念を持つことの重要性を語り、「新しいことをするのは失敗だらけ。でもうまくやれるという楽観を持つことだ」と力を込めました。
リクルートホールディングスで新規事業立ち上げなどを支援しながら、自ら提案・起業したニジボックスで代表取締役兼社長を務める麻生要一さんは、何かを成し遂げる人は強い原体験を持っていることを指摘しながら、「原体験を持つための唯一の方法は、何かを始めてやり続けることだ。きっかけは何でもいい。何かを始めて、小さな一歩をやり続けてほしい」と語りました。
「未来の仕事の作り方~ロボットとの暮らしから見えた世界」と題し、一緒に暮らしているというロボットフォンと共に登場した奥田浩美さん(株式会社ウィズグループ代表取締役/株式会社たからのやま代表取締役)は、「時代が変わる時に必要なのは好奇心。子どもたちはワクワクしている大人を探してください」と話し、大人たちには「子どもはワクワクした大人に預けるべきです。自分で育てようと思わないでください」「どんな世代の人も、将来は何になろうかといつまでも考え続けてください」と呼び掛けました。
(スペシャルゲストのプレゼンテーションの内容は、13日から毎週火、金曜日、琉球新報Styleで順次紹介します)
小学生2人がアプリ開発を報告
この日は何と小学生2人が自ら開発したアプリを紹介しました。「CA-Frogsキッズプログラマー特待生」の2期生として薫陶を受けてきた沖縄アミークスインターナショナル6年の小嶺響平君と、那覇市立小禄南小6年の木村美月さんの2人です。
小嶺君は買い物がもっと便利になるアプリ「SMAL(スマル)」を開発しました。日常の買い物の「あ、買い忘れた」といううっかりを防止したり、過去の登録リストを確認できたりと、日々の暮らしをサポートするシンプルなデザインが特徴のアプリです。
木村さんが考案したのは「Family Promise―家族約束アプリ」です。家族の約束を守るため、約束を守ったり破ったりすることでポイントが増減し「罰金」につながるという仕組みで、遊び心をくすぐりながら当たり前の守れるようにサポートするアプリです。
小学6年生とは思えないITスキルと、堂々としたプレゼンぶりに、来場者は度肝を抜かれていました。
OB OGやっぱりすごい
RyukyufrogsOBOGの2人も登壇しました。高校生で起業家となったカッシーニ株式会社代表取締役兼CEOの仲田洋子さんは、「イノベーション」を探究してきた自らの経験を踏まえ、「イノベーションを求める周囲の大人」が求める理想像に無意識にとらわれてしまう危険性を指摘し、「イノベーションといえば何とかなると思うのはもったいない。そうならない環境づくりが大切なんじゃないか」と述べ、自分が本当にやりたいことを問い続けていくことの大切さを語りました。
リクルートで5つ以上の新規事業を担当した後、株式会社misosilを創業し代表取締役社長に就任した3期生の兼城駿一郎さんは、考案したサービスをプレゼンしながら「卒業生も挑戦と失敗を重ねています」と語り、Ryukyufrogsの経験が今につながっていることを報告しました。
私たちの可能性は無限大だ
イベントも佳境を迎え、会場の熱気も最高潮を迎えるころ、ついにRyukyufrogs8期生が登壇しました。体調不良でやむなく欠席となった平得永大さん(県立八重山農林高校3年)を除く8人が、「教育×IT」「障がい×IT」「農業×観光×IT」「ペット×IT」「いじめ×IT」をテーマに、5つの新サービスを発表しました。
トップバッターを務めた畑中ひらりさん(琉球大3年)、仲松拓哉さん(沖縄国際大4年)の2人は「教育×IT」のサービス「WAKALUN」を発表。中学生が分からないことを質問すると、答えてくれる記事の提供サービスを紹介しました。
「観光×IT」に挑んだ津覇悠野さん(コザ高校2年)は「TRY JAPAN」を紹介。
「障がい×IT」の嘉数涼夏さん(沖縄国際大2年)は、ダウン症のいとことの関わりをきっかけに考え出したダウン症の親たちをつなぐコミュニティーサービス「p-style」を発表しました。
「ペット×IT」では、上原ありささん(興南中3年)、金城拓登さん(沖縄工業高等専門学校2年)がペットのしつけサービス 「A―pet」を紹介しました。
自分自身のいじめられた体験から、「いじめをなくしたい」という強い思いを込めて「いじめ×IT」でサービス「Helpush」をプレゼンしたのは、島尻優楓さん(古堅中3年)と佐久間風里さん(八重山高校3年)。アンケート調査や既存のいじめ対応の電話相談、スクールカウンセラーに相談するときの問題点を挙げ、「子ども達が本当に必要としているサービスの方法を同世代の私たちが考えたい」と熱く語りました。
ゲストからサプライズ賞
すべてのプレゼンを終え、スペシャルゲストからはあらためてLeapDayに参加しての感想や期待が次々と寄せられました。そして、リクルートホールディングスMedia Technology Lab.室長の麻生要一さんから、島尻さん、佐久間さんの「Helpush」に、「リクルート賞」を贈るとというサプライズ発表がありました。
「リクルート賞」の内容は、起業のスタートアップを支援するため、リクルートが支援している会員制コミュニティースペース「TECH LAB PAAK」 (東京都渋谷区)の場所やネットワーク、サービスなどを半年間使えるというもの。麻生さんは「日本からいじめを完全になくすのは難しいかもしれないけど、いじめで苦しむ子どもたちが少しでも安らぐようなサービスをつくってほしい。応援します」と期待を込めました。
沖縄の未来は明るい
8期生の発表の最後は、最年少の上原ありささんが大切な言葉で締めくくってくれました。
「大人の皆さんにお願いしたいことがあります。目の前の子どもや若者が夢を語ったら、全力で応援してほしい。私がここまでこられたのは『君ならできるよ』と背中を押してもらったから。もし若者が夢を語ったら、すぐに否定するのではなく『うん、いいね、面白いね』と応援してほしい」と語りました。
「沖縄の未来は明るい!」。会場はそんな熱気に包まれていました。
※詳しくは12月12日付の琉球新報をお読みください。