基幹産業として沖縄の農業を引っ張ってきた県内の製糖業が工場の老朽化という大きな課題を抱え、岐路に立っている。分みつ糖8社9工場のうち、うるま市にある本島唯一の製糖工場ゆがふ製糖と石垣市の石垣島製糖は早急な建て替えが求められてきたが、高額な事業費が壁となり、事業主体が決まらず難航。国の事業で6割の補助が受けられるが、残りの4割を地元や事業主体で負担することとなり、費用調達の面から議論が進まない状況だ。
同様に建て替え問題を抱えていた北大東村の北大東製糖は工場の部分更新で打開を目指すことになったが、いずれの工場も創業60年を超える中、既存設備の処理能力の低下などで操業期間が延長するなどの問題が生じている。
300億円
ゆがふ製糖は施設や設備の老朽化に伴い、中城湾港新港地区内への移転を検討する。21年1月に分譲用地取得が内定したが、事業費は300億円かかると見込まれる中、用地を管理する県に資金調達や運営体制などの進捗(しんちょく)状況をまとめた報告書類を提出できず、これまで期限を2度延長している。再々設定の期限は26年3月末となっているが、依然として事業主体が決まらず、めどが立っていない。
同社によると、設備を国産に比べ安価な外国産の導入を検討するなど事業費の圧縮を図っているが、外国産機械の性能分析に時間がかかるなどし、見積もりの算出が出せていない状況という。担当者は「県などの関係者と連携しながら進めているが、あまりにも大きな事業で基本設計もなかなか決定できていないのが現状だ」と述べた。
計画見直し
敷地内での建て替え計画を策定した石垣島製糖は、全面改修から既存の工場設備を利用するなど計画を見直し、280億円と見込まれた事業費を169億円まで縮小した。それでも事業主体の見通しは立っていない。設備の処理能力低下により操業期間の長期化や品質低下など農業経営に支障を来している。
北大東製糖は全面改修から部分更新に見直した。200億円超だった事業費を138億円までに圧縮した。地元負担を抑えることを目的に、村が事業主体となり、80%が交付税措置される「辺地対策事業債」(辺地債)を活用する。今年5月から着手しており、基本設計など部分建て替えを8年計画で進め、31年度に完了する見込み。
(新垣若菜)