沖縄県が、辺野古新基地建設工事の事業者である沖縄防衛局に対し行政指導を行い、そのわずか数時間後にサンゴの移植許可を撤回した。本来なら行政手続き法に基づき、県は不利益処分を出す前に事業者に反論の機会を与えなければならないが、今回の場合、防衛局はすでにサンゴの移植に着手していることから、県は一刻の猶予もないと判断したと推察できる。個別具体のケースで判断が分かれる行政手続き法において県の判断は緊急性が認められ、手続き上も問題ないだろう。
また、県はサンゴの特別採捕許可を出すに当たり、県漁業調整規則の規定に基づきサンゴの生残率を高めるために、水温の高い時期や台風の時期、繁殖時期を避けること、移植後の経過観察をすることなど明確な条件を付した。これは全面的に移植を可能にしたのではなく、あくまで条件を満たした場合にのみ認めるというもので新たに義務付けたものだ。
そもそも、防衛局がサンゴの移植をする必要性の根幹は、水産資源保護法にのっとり貴重な海洋資源を守ることにある。国が定めた法律を、国自らがほごにする許されざる矛盾と言わざるを得ない。
亜熱帯気候である沖縄の夏場の高海水温や、台風の頻発は周知の事実だ。防衛局自らが専門家を集めて設置した環境監視等委員会の委員らも、夏場の移植の危険性を再三指摘している。
軟弱地盤の覚知に伴う工法変更も含め、政府は法律や条例、許認可制度の意義を再考し、順守する必要がある。
(行政法)
▼沖縄県が辺野古サンゴ移植許可を撤回 作業強行「条件に反する」