名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立て予定区域内外のサンゴ移植で、沖縄県は30日、沖縄防衛局に出していた移植許可を撤回した。県は高水温期の移植でサンゴの生残率が下がるとして同日、防衛局に作業の中止を求める行政指導をしたが応じなかったため、撤回を判断した。防衛局は30日も作業を実施した。防衛局は30日夜、県の許可撤回に伴い、31日以降の移植作業を中止すると表明した。本紙の取材に、「(県の許可撤回)通知を精査し、適切に対応する」とした。
玉城デニー知事は30日、会見を開いてサンゴの移植許可撤回を発表した。玉城知事は「条件を順守しない沖縄防衛局に対し、許可撤回は県漁業調整規則に基づく適切な処分だ。県は法令に基づき、適切に対応していく」と述べた。移植許可から2日での撤回は異例の早さとなる。
サンゴ移植を巡っては、国を相手取った訴訟で敗訴が確定した県が28日、防衛局が申請したサンゴ類約4万群体の移植を許可した。サンゴの生残確率を高めるため、高水温期や繁殖期、台風の時期などを避けることを条件に付していた。
防衛局は29日、埋め立て予定区域内の大浦湾側のサンゴ約830群体の移植を始めた。30日も現場周辺海域に作業船が複数停泊し、ダイバーが水中から作業船に上がる様子などが確認された。
県は30日、大浦湾周辺の海上・陸上の水温測定や現場の確認を行った。サンゴの専門家からも意見聴取した。県はこの時期の移植がサンゴの生残率を低下させ、水産資源保護法や最高裁判決に反すると判断した。
防衛局は30日、本紙の取材に、移植作業が県が示した条件に適合しているとし「専門家の意見を踏まえ、水温を含めて作業当日の現場の状況を確認の上、実施している。サンゴへの影響に配慮し適切に移植できる」と正当性を主張した。
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