屋比久が銅メダル 沖縄の両親も歓喜「よくやった」 妻「おめでとう」


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自宅から声援を送る屋比久翔平選手の(右から)父の保さんと母の直美さん、祖母の渡久山ミヨさん=3日、宜野湾市の自宅(保さん提供)

 レスリング選手だった父の保さん(58)とやり投げのトップ選手だった母の直美さん(52)にとって、夢だった五輪出場の舞台で息子が快挙を成し遂げた。保さんは「五輪に出るだけでも大変なのによくやった」と手放しでたたえ、ねぎらった。直美さんは「メダルがほしいという気持ちが前に出ていた。良かったのひと言につきる」と涙ぐんだ。

 2人は息子が生まれると「世界に羽ばたくように」と願い、名付けた。保さんは、小学4年から本格的にレスリングを教え始めた。

 コロナ禍で先が見えない中、屋比久選手は保さんに弱音を吐くこともあったという。「昨年5月から3カ月間は全くマットにも上がれず、練習ができなかった。昨年10月ごろから海外で東京五輪の予選大会が始まっても日本から行くことができず、不安もあったと思う」

 大会前の1カ月間は邪魔しないよう電話やメールを控えてきたが、3日朝、携帯の通信アプリ「LINE」(ライン)でメッセージを送った。「相手が焦ってきたらチャンスがある。最初は守ろうね」。息子を思う親心がにじんだ。

 銅メダルが懸かった試合の中継を宜野湾市の自宅で見守った。保さんは「案の定、その通りになった。最後は持ち上げて前に投げた。あんな技、初めて見た。準備してきたんでしょうね、すごいですよ」と感嘆した。

試合を見守る屋比久選手の妻の加奈子さんと息子の紫琉ちゃん=3日、横浜市の自宅(加奈子さん提供)

 横浜市では、屋比久選手の妻の加奈子さん(25)が、もうすぐ1歳になる長男紫琉(しりゅう)ちゃんと見守った。加奈子さんは「試合の前と最初は見ていて緊張していた。でも、翔平の足の動きが良くて、勝てると思った」と勝利を喜んだ。試合中、屋比久選手が投げ技を決めた時には思わず叫び、抱えていた息子の紫琉ちゃんを大泣きさせてしまったという。

 5日に1歳になる紫琉ちゃん。屋比久選手は「将来、何でもいいから一番になれるものを目指してほしい」と思いを込める。試合後、会場に設置されたモニター越しに加奈子さんと紫琉ちゃんにガッツポーズを見せた。「誕生日のプレゼントとして(メダル)をかけてあげたかった。家に帰ってやりたいな」と父親の顔をのぞかせた。加奈子さんは「帰ってきたら良かったね、おめでとう、と声を掛けたい」と語った。

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