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(3)一つの地域に複数の店舗…自社競合はしていないのか?


この記事を書いた人 Avatar photo 玉城江梨子

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サンエーの中でも歴史のある店舗「赤道ショッピングタウン」=うるま市

 うるま市の県道75号沿い。本島中部地区の中核店舗「具志川メインシティ」から約1.5キロほど離れた場所に赤道ショッピングタウンがある。「具志川メインシティを開店するとき『赤道は閉店するんでしょう』とさんざん言われた」。豊田沢取締役はこう明かす。

 しかし、具志川メインシティ開店から20年以上たった今も赤道ショッピングタウンは営業を続けている。取材した平日昼間も多くの客が訪れていた。「新店を開くタイミングで既存店を閉店することはない。長く地元に愛されている店舗ほど、立地がよくお客さんがついている」と強調する。

地域独占状態を作る

 サンエーのスーパー、外食店舗数は2022年1月現在、85店に上る。同社の出店戦略は一つの地域に広域型ショッピングセンター(GMS)、近隣型ショッピングセンター、小型食品館を組み合わせて出店していき、地域独占状態を作るというものだ。車で10分圏内にサンエーの店舗が複数ある地域も珍しくない。狭い沖縄でこれだけの店舗数になると自社競合が懸念されるが、それを回避するための戦略と切り離せないのが、フランチャイズ(FC)だ。

 サンエーのFC事業は1995年の家電のダイイチ(現エディオン)から始まり、ドラッグストアのマツモトキヨシ、雑貨の東急ハンズに無印良品、外食のジョイフル、大阪王将、ベビー用品のアカチャンホンポなど現在、12社とFC契約、1社とパッケージライセンス契約を結んでいる。

 近年、出店が目立つのが売り場面積1500~1万4000平方メートルの中規模の近隣型ショッピングセンターで、そこには食品館とドラッグや外食、家電といったFCにテナントが一つ、二つ入るパターンが多い。地域のニーズを踏まえたFCを配置することで、同一地域の自社店舗と違いを出しすみ分けているのだ。

既存店活性化にも

サンエー那覇メインプレイスの食品売り場に展開する無印良品(提供)

 既存店のリニューアルでも鍵となるのはフランチャイズだ。たとえば2021年はハンビータウンに県内2店舗目となるアカチャンホンポ、しおざきシティと豊見城ウイングシティに無印良品を開店というように、既存店活性化の目玉にフランチャイズを使っている。

 沖国大の宮城和宏教授は「サンエーはフランチャイズ経営を多店舗で行う『メガフランチャイジー』として多角化を進め、県内では特異な経営を行っている。既存業態、FC、テナント専門店の相乗効果を最大限発揮させるのがサンエーの経営戦略の一つ」と分析する。

 店舗数を増やし流通を自社で持つことにより、効率化を図るという「規模の経済性」と、FCによる多角化でリスク分散を図るという「範囲の経済性」の掛け合わせがサンエーの利益率向上の方程式の一つといえる。

 (玉城江梨子)

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