【東京】沖縄の日本復帰50年の節目で玉城デニー知事が政府に提出した建議書について、岸田文雄首相ら関係閣僚が22日までにそれぞれの受け止めを語った。共通するのは具体的な内容に言及せず、「さまざまな」意見、考え方としている点だ。名護市辺野古の新基地建設など、県と政府の立場が分かれる内容だけに、今後建議書の訴えが実現するかは不透明だ。一方、玉城知事は「受け取ったのは紛れもない事実」として、政策にどう反映されるかを検証する構えを示している。
「これからの沖縄について、さまざまな考え方を述べられたものであるということだ」
岸田首相は13日の衆院内閣委員会での答弁で、建議書への所感を求められ、こう述べた。
「沖縄振興」や「基地負担軽減」への取り組みの決意を示したものの、建議書の中身について具体的な言及は避けた。
松野博一官房長官も同日午前の会見で、記者団から建議書の内容について、「防衛政策一般について地方自治体が提言することは適切か」と問われ、「さまざまな意見をいただきながら政策を進めていくことは重要だ」との考えを示した。
一方、岸信夫防衛相は20日の閣議後会見で、「これからもさまざまなご意見をお伺いしつつ、日米同盟の抑止力を維持しながら、基地負担軽減に取り組む」と述べ、西銘恒三郎沖縄担当相も同日、「さまざまなご意見を伺いながら沖縄振興に取り組む」とした。
いずれの閣僚も、建議書の中身に踏み込むことなく、形式的な対応に終始したという印象が拭えない。
玉城知事が示した建議書は、政府が推進の立場を取る辺野古新基地建設について「断念」を求めるなど政府方針と合致しない部分が少なくない。
防衛省関係者は、「受け止めはするが、できることとできないことは当然ある。県も分かっていて(建議書を)出しているはずだ。互いに『大人の対応』をしたということだ」と強調している。
一方の玉城知事は建議書が形骸化することへの懸念から、岸田首相に建議書を手渡した10日の会見で「政府が受け取ったというのは紛れもない事実」とした上で「その事実に即して、今後の政府の検討について機会がある度にそれを確認する」と政府にくぎを刺した。
建議書での訴えに政府は政策でどう答えるか。玉城知事の検証姿勢とともに建議書をめぐる双方の動向が注目される。
(安里洋輔、明真南斗)
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