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のぼりをそっとしまう議員選候補者「立てないほうがいい」…空振りのセット戦術 くすぶる不安に候補者差し替え論も浮上 佐喜真陣営<沖縄県知事選・信任の舞台裏>1の続き


この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎
総決起大会で宜野湾市長選・市議選候補者と壇上に並ぶ佐喜真淳氏(中央)=8月29日、宜野湾市民会館(喜瀬守昭撮影)

 本島中部の自治体の議会議員選挙に出馬する保守系候補は、選挙戦最中の9月上旬、佐喜真淳氏=自民・公明推薦=の陣営から配布された同氏ののぼり旗を、そっと車内にしまった。「支援者から、佐喜真氏ののぼりは立てない方がいいと言われた」と声をひそめた。

 厳しい戦いが続いた佐喜真氏の陣営は、知事選と統一地方選が同日投開票となることに活路を見いだしていた。候補者名を同時に売り込む「セット戦術」を徹底し、得票につなげる算段だった。

 だが、旧統一教会と政治の関係が全国的に注目される中、佐喜真氏との関わりも他陣営から批判の的となった。

 選対本部で開票を見守った自民関係者は「自民党議員は個人事業主。自分の議席確保を争っている時に、自らの票を減らすかもしれない人の名前までお願いする人はいない」と突き放した。

 佐喜真陣営の県政奪還に向けた戦略は、当初から空振りが目立った。

■「失政批判」根拠も薄れ

 政策発表では「経済危機突破」を前面に掲げ、全国最悪レベルの新型コロナウイルスの新規感染者数が確認される現状と、苦境にあえぐ県経済を玉城県政の「失政」と批判。経済界のまとまった支持を追い風に革新県政を退陣に追い込んだ1998年知事選の再現をもくろんだ。

 だが、告示日前から県内の新型コロナ新規感染者は減少傾向に入り、有効求人倍率も上昇して経済回復への兆候も出だした。失政批判の根拠が次第に薄れていき、「危機という訴えが届いていない」(経済界関係者)との懸念が強まった。

 前回選で負けた玉城デニー氏を相手に「佐喜真氏で勝てるのか」との不安は当初からくすぶった。参院選で善戦した古謝玄太氏との候補者差し替え論も浮上し、不安に拍車をかけた。

■修正能力

 参院選時に続々応援に入る閣僚や党幹部への対応に地元側が時間をとられた反省から、自民党県連は応援の抑制を党本部に依頼した。

 ただ参院選時には選挙戦を締めくくる打ち上げ式に茂木敏充党幹事長が自ら志願して来県しマイクを握った一方で、今回は小渕優子党組織運動本部長の出席にとどまった。玉城陣営で国政5野党の党首が顔をそろえたのとは対照的だった。

 県連関係者の一人は「もくろみが外れた時の修正能力がなかった」と頭を抱え、今後の選挙態勢の立て直しに課題を残した。
 (’22知事選取材班)
 

沖縄県知事選・信任の舞台裏

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