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「翁長雄志氏の後継」からの脱却 玉城氏が無党派層を取り込めた理由<沖縄県知事選・信任の舞台裏>2続き


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海の生き物が描かれた絵のプレゼントを受け取る玉城デニー氏(左)=8日、宜野湾市宇地泊(大城直也撮影)

「県政危機」打ち消し、98年の知事選再来を防ぐ…玉城陣営、選挙直前に亡くなった前県議会議長の危機感<沖縄県知事選・信任の舞台裏>2

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 選挙戦から一夜明けた12日午後。インタビュー取材を受けるため、琉球新報社を訪れた玉城デニー氏が発する言葉の一言一言には高揚感と強い自信が入り交じっていた。「信任を受けて、2期目も辺野古反対で1ミリもぶれない。県民も1ミリもぶれずに応援してくれている。これが結果だと証明された」。約1時間のインタビューで、せきを切ったように、選挙戦で他候補が展開した自身への批判をけん制する発言が次々と口を突いた。

 玉城氏の初当選は翁長雄志前知事の死去に伴う2018年の知事選。当選後、1期目の県政運営は決して順風満帆ではなかった。日韓関係の悪化による外国人観光客の落ち込み、首里城焼失、豚熱、軽石漂着と、災害や外的要因による経済悪化が続いた。任期後半は新型コロナウイルスの対応に追われ、とりわけ感染症による経済の悪化は県民生活に暗い影を落とした。

 翁長県政と比較され続け、前回選の当選も翁長氏の死去による弔いで「げたを履かされた」(野党幹部)ともやゆされた。こうした中で迎えた2度目の知事選。玉城氏の陣営は「翁長雄志氏の後継」ではなく「玉城デニーとしての勝利」を目指した。玉城氏の多様性を受け入れる人柄を前面にし、無党派や女性票を取り込む戦略を打ち出した。街頭に立った玉城氏は積極的にスキンシップを取り、有権者との距離を縮めた。

 一方、選挙戦で自民党が支援した前宜野湾市長の佐喜真淳氏は「県政危機突破」をキャッチフレーズに、経済分野での玉城県政批判を徹底的に展開した。自民側の念頭にあったのは、かつて革新系の大田昌秀知事に対して、保守側から立候補した稲嶺恵一氏が「県政不況」を掲げて県政を奪還した1998年の県知事選挙だった。

 だが、玉城陣営は新里米吉氏の危機感を共有していた。経済面で玉城県政への批判を強める佐喜真陣営のネガティブキャンペーンをはねのけた。
 ('22知事選取材班)

 

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