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「県政危機」打ち消し、98年の知事選再来を防ぐ…玉城陣営、選挙直前に亡くなった前県議会議長の危機感<沖縄県知事選・信任の舞台裏>2


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玉城デニー氏(右)の選挙母体選対本部長としてあいさつする新里米吉氏(中央)=7月31日、那覇市の教育福祉会館

 再選を目指す玉城デニー知事へのネガティブキャンペーンを強める自民側に対し、危機感を抱いたのが選挙戦直前に亡くなった前県議会議長の新里米吉氏だった。新里氏は急逝する数日前の7月31日、那覇市の教育福祉会館で開かれた玉城デニー氏の選挙母体「ひやみかちうまんちゅの会」の事務所開きで「先進7カ国で日本の賃金は横ばい。円が下落して物価が上がる。強いて言えば国政不況だ」と強調した。

 「県政危機」を掲げる相手候補に対し「国政不況」と打ち返した新里氏の発言を巡り、陣営幹部は「98年の知事選を知る新里氏の危機感は、並々ならないものがあった」と振り返る。こうした新里氏の危機感は陣営内に波及していく。

 選挙戦序盤、玉城氏の演説は辺野古新基地問題よりも、経済政策や子ども施策に重点が置かれた。期間中には国葬問題や旧統一教会と自民党の政治家との関わりが指摘され、岸田内閣の支持率低下が、佐喜真氏への不信へとつながったことも追い風となった。選挙期間中に、続々と来県した国政野党の幹部も「不景気は自公政権の失敗」と街頭で訴えた。

 投票箱が閉まった9月11日午後8時すぎ。新里氏が「国政不況」と発した同じ会場で、玉城陣営は各社の当確報道を受け、万歳三唱した。陣営幹部は「子どもでも物価高は日本全国の問題だと分かる。逆に経済的音痴をさらした」と敵失を指摘。辺野古移設に反対する強固な県民意思を背景に、「県政危機突破」を打ち消した玉城陣営は、佐喜真氏へと流れる票を最小限にとどめた。

 知事選から2日後の13日、自民党県連の中川京貴会長は「経済突破という主張が市町村になかなか浸透していかなかった」と肩を落とした。
 ('22知事選取材班)

 

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