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「オール沖縄」と自民、両陣営とも分裂とねじれを抱え那覇市長選へ 引退する城間市長は誰を応援?<沖縄県知事選・信任の舞台裏>5


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玉城デニー氏(左端)の再選を喜ぶ城間幹子市長(中央)=11日、那覇市の教育福祉会館

 玉城デニー氏が再選を決めた沖縄県知事選から息つく間もなく、10月9日投開票の豊見城市長選、同23日投開票の那覇市長選と大型選挙が続く。両市長選ともオール沖縄が市政を堅持するか、それとも自公が市政を奪取するかという、県知事選と同様の対決構図となる。とりわけ県都決戦の那覇市長選は知事選からの政局を引きずり、両陣営ともに分裂、ねじれを抱えている。

 「佐喜真淳氏の選挙に協力する」。8月31日、自民党が那覇市長選で擁立した知念覚氏は、副市長退任式の後、報道陣に明言した。翌9月1日には佐喜真氏の選挙事務所を訪れてあいさつをし、知念氏の地元・首里山川町の集会にも佐喜真氏らと参加した。だが、打ち上げ式など街頭で一緒に立つことはなかった。

 知念氏の後援会関係者は「(街頭に立ってほしいという)リクエストはなかった。一緒に立ちたくないわけではない」と主張する。一方、別の関係者は「保革を超えた市民の選挙にしたい」と語り「佐喜真氏の応援に立たない方がいい」との意見もあったことを認める。知念氏は後援会の意向などを踏まえ、表立った応援を避けたとの見方がある。

 知念氏は佐喜真氏を応援する姿勢を明確にしたことで、自民から擁立する条件をクリアした。自民内部では知念氏の事情に理解を示す声もあるが、一緒に街頭に立たなかったことに「条件違反だ」との批判も渦巻く。ある関係者は「自民はばらばらだ」と嘆いた。

 14日には元ボクシング世界王者の平仲信明氏が無所属での市長選出馬を急きょ表明し、保守の一部が分裂する形となった。

 平仲氏を支援しているのは不動産業などを展開するRJグループの一丸秀信会長だ。一丸氏は所有する建物を佐喜真氏の選挙事務所として貸し、知事選で自民に協力していた。だが、自民が那覇に知念氏を擁立しようとする動きに「オール沖縄市政で副市長をやっていた人を自民側から出すなんて考えられない」と強く反発。平仲氏の擁立に動いた。

 平仲氏と一丸氏の動きは「あからさまな知念つぶし」と受け止められているが、自民市議は「影響は小さい。静観すればいい」と冷ややかだ。

 一方、「オール沖縄」勢力が那覇市長選に擁立する翁長雄治氏は県知事選、県議補選とのセット戦術を展開して浸透を図った。選挙母体の発足に向けて準備を進めるが、懸案は翁長陣営と知念陣営の双方から引き合いのある現職の城間幹子市長が、どちらを応援するかということだ。

 与党市議は「城間氏を選対本部に迎えたいが、厳しいかもしれない」と話す。与党県議は「城間氏が(中立を保って)翁長氏を応援しないというだけで十分に知念氏の応援になるのではないか」と懸念する。

 玉城デニー氏の陣営が知事選勝利に沸いた11日夜、城間氏は取材に対し「いったん区切りが付いた。(判断は)これからだ。次期市長に望むのは市政をしっかり導ける人、どんな状況でもそれが一番だ」と固い表情で語った。

(’22知事選取材班)

沖縄県知事選・信任の舞台裏

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