市長選、参院選…破竹の勢いだった自民 知事選で失速した「誤算」とは<沖縄県知事選・信任の舞台裏>3
◇ ◇
知事選告示直前、オール沖縄側から那覇市長選に出馬する翁長雄治氏の県議辞職に伴う県議補選が知事選と同日選になることが決まった。だが、自民の候補者選考は二転三転。告示日直前に公認候補として下地ななえ氏の出馬を決めたものの、運動不足は否めなかった。
結局、オール沖縄側が他候補と票を分け合う構図だったにもかかわらず、下地ななえ氏は3番手で完敗。こうした動きに引きずられるように、大票田の那覇市で佐喜真淳氏は大苦戦した。投票総数に占める佐喜真氏の獲得割合は前回選比6.2ポイント減の34.7%にとどまり、県内市町村の中で最も低かった。那覇の得票数は佐喜真氏と下地幹郎氏の票を足しても、玉城デニー氏の得票に1万票近く足りなかった。
県連関係者は「大敗の要因は那覇にある。県連1区支部が統率できておらず、票を逃がしている」と指摘する。市議会の自民党会派には市長選の候補者選考を巡るしこりも生まれているほか、県連や経済界の一部で、1区支部長の国場幸之助衆院議員の責任を問う声も噴出している。
一方、玉城氏を支援したオール沖縄内部では不協和音も漂う。知事選と同日選となった県議補選にオール沖縄会議共同代表に就く糸数慶子氏の娘でNPO法人代表の糸数未希氏が出馬し、オール沖縄候補の上原快佐氏と票を争った。
関係者によると、県議選の候補者選考の過程で、玉城知事は未希氏に出馬をアプローチし、慶子氏にも打診した。だが、最終的にオール沖縄側は上原氏を候補者として決定し玉城氏とのセット戦術を展開した。慶子氏らが「はしごを外された」(オール沖縄関係者)との見方も上がる。
ある与党県議は県議補選の選考過程を念頭に「知事選はデニー氏がよかったというより佐喜真氏が弱かった。知事の求心力はなかったも同然で、内部はぼろぼろの状態だ」と内情を明かす。知事選を勝ち抜き、2期目のスタートを切る玉城氏だが、内部で生じたほころびは徐々に表にも現れ始めている。
オール沖縄と自民による県内最大の政治決戦を終え、その余韻は組織体制の「揺らぎ」となって顕在化した。10月の那覇市長選に向けて、両勢力共に組織体制の立て直しが急務となっている。
('22知事選取材班)
沖縄県知事選・信任の舞台裏
現職の玉城氏が再選を果たした知事選の舞台裏を振り返ります。
▼佐喜真陣営に早々と広がった諦め感 「旧統一教会」問題の逆風やまず 劣勢を払拭できる材料なく<佐喜真陣営①>
▼のぼりをそっとしまう議員選候補者「立てないほうがいい」…空振りのセット戦術、候補者差し替え論も<佐喜真陣営①続き>
▼「県政危機」打ち消し、98年の知事選再来を防ぐ…玉城陣営、選挙直前に亡くなった前県議会議長の危機感<玉城陣営②>
▼「翁長雄志氏の後継」からの脱却 玉城氏が無党派層を取り込めた理由<玉城陣営②続き>
▼市長選、参院選…破竹の勢いだった自民 知事選で失速した「誤算」とは<自民県連>
▼オール沖縄「内部はぼろぼろ」それでも自民は大敗…両陣営の懸念は那覇に<オール沖縄>