創業44年、首里の人気店「あやぐ食堂」が10月末で閉店 最盛期は100種類を超えるメニューも 


創業44年、首里の人気店「あやぐ食堂」が10月末で閉店 最盛期は100種類を超えるメニューも  地元客や観光客から長く親しまれてきたあやぐ食堂。10月末で閉店することが決まった=3日、那覇市首里久場川町
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 創業44年。那覇市首里久場川町で地域住民らに長年親しまれてきた「あやぐ食堂」が10月末で閉店する。あやぐ食堂と言えば、「うまい、早い、安い」の三拍子がそろった人気店として、地元客だけではなく観光客のリピーターも多い。しかし、ここ数年の食材費の高騰などで、利益を出すことが難しくなり、やむなく廃業を決断。「優しいお客さんに恵まれて幸せだった。『おいしかったよ』『また来るよ』などの言葉がうれしく、人生の生きがいでもあった」。店主の平良喜和子(きわこ)さん(74)は感謝の言葉をつづる。

10月末で閉店するあやぐ食堂。連日、長い行列ができる人気店となっている=10日、那覇市首里久場川町

 あやぐ食堂は平良さんが30歳の時に創業した。伊良部島に生まれ育った平良さんは伊良部中を卒業後、本島に渡った。「軽食の店ルビー」などで経験を積み、妹とともに那覇市安里で食堂を開業した。しかし、妹の結婚を機に、店を閉じ、その後、一人であやぐ食堂を始めた。あやぐは伊良部や宮古島などに伝わる民謡やわらべ歌などの歌謡を指す言葉で、「この名前なら頑張っていける」と思って名付けた。

 私生活では25歳の時に結婚。3人の子どもに恵まれた。一方、夫が体調不良で働けない時期が続き、平良さんが家計を支えた。子育ての傍ら、朝から晩まで食堂に立ち続けた。開業当時、琉球大が首里から現在の西原町千原に移転する時期で、店には多くの学生が通った。「あの当時は、琉大の学生寮が近くにあって、食堂で勉強する子もいれば、店を手伝ってくれる子もいた。皆いい子でとっても助かったさ」と振り返る。

あやぐ食堂のメニュー一覧。中でも人気なのが、そば定食とゆし豆腐定食だ

 当時は、沖縄そばが200円台、ポークたまごが300円台の時代。常連客からは食べたい料理の要望が相次ぎ、最盛期はメニューが100種類を超えた。しかし、ここ数年、新型コロナウイルスなどの影響で客足は落ち込んだ。物価高も重なり、何度か値上げに踏み切ったが、それでも経営は厳しかった。「これ以上値上げすると『あやぐ』らしくない」として、廃業を決めた。

 あやぐ食堂の営業は10月31日まで。午前9時~午後3時。日曜と水曜定休。那覇市首里久場川町2丁目128の1。 (吉田健一)

あやぐ食堂の人気メニュー「そば定食」(さしみ、チキンカツ付)

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