DVDやCDのレンタル・販売、書籍販売などを手掛ける「TSUTAYA(ツタヤ)」の閉店が全国で相次いでいる。沖縄でも27年間営業した宜野湾上原店が3月31日に閉店した。さらに約30年間営業した沖縄市の山内店が8月31日に閉店し、約21年間営業した那覇市の壺川店も9月30日に閉店した。10月31日には沖縄市の美里店した。11月30日に与那原町の与那原店も閉店することが決まっている。長年、地域に親しまれてきた店舗が閉店する例が続き、利用客から惜しむ声が上がる。
閉店が相次ぐ背景には、インターネットを通したデジタル配信で音楽や映画、動画などが簡単に購入できる環境になってきたことが指摘されている。DVDやCDのレンタルなどの売り上げが厳しい状況になってきたことも影響しているとみられる。
美里店は1997年から約26年間営業してきたが、10月31日で閉店した。閉店直前、店内は感謝と惜別のメッセージにあふれていた。
「人生の半分以上をツタヤで」
TSUTAYA美里店を切り盛りするのは前川健一郎店長(48)。18歳の頃にアルバイトで山内店で働き始めて以来、県内の店舗で働いて社員となり、約10年前から美里店の店長を務めてきた。
「バイトからツタヤで働き始めて約30年。人生の半分以上をツタヤで過ごしている」と話す前川店長。閉店について「思い入れがありすぎて、どんな感情か自分でも分からない」と明かした。「寂しい」という一言だけでは言い表せない胸の内がうかがえた。
「沖ツラ」作者のメッセージ色紙も
それでも前川店長は「ネットを使えない世代の人たちが映画を見るためにDVDを借りていただいた。棚の本を手に取って紙をめくることで感じるものがある」と強調する。
美里店は、人気漫画「沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる」(沖ツラ)の作者・空えぐみさんも常連客の一人だという。店内には、空さんによる「26年間ありがとうございました!」とのメッセージを添えた色紙も飾られていた。
コロナ禍の巣ごもりも拍車
デジタル配信サービスの充実に加え、新型コロナウイルスの感染拡大の時期が続いていたことで、外出せずに購入できるデジタルサービスの利用者が増えたことも店を営業する中で感じたという。前川店長は「コロナで巣ごもり状態になり、アマゾンやネットフリックスなど、ネットで買えるようになって移行していったのではないか」と話す。
閉店を知った利用客からは「悲しいね」「移転ではなく、閉まるの?」などの声が相次いでいる。近くに住み、いつも自転車で訪れるという常連の50代の男性は「まさか閉店するとは考えたこともなかった。本を買ったり、DVDを借りていた。家の近くで助かっていた。閉まるのは寂しい」と惜しんだ。
台風のとき「わくわくしながらレンタル」
近所に住み、幼い頃からよく利用した女性(21)は「台風の時は、わくわくしながらDVDを借りた。初めて自分のお金で文房具を買ったり、学校帰りにちょっと寄り道したりするのに最適な場所だった」と振り返る。「閉店すると聞いた時はものすごく悲しくなった」。閉店セールに駆けつけ、妹と一緒に好きなアーティストのCDや漫画などを「爆買い」して、感謝のメッセージも書いた。
女性は「私にとって本当に大切な思い出のあるお店なので本当に悲しい。『26年間ありがとうございました』の気持ちでいっぱい」と思いを語る。閉店が迫る店内は、利用者や店員の思いであふれていた・・・。
閉店後を見据え、改装中の2階へ進む階段には、たくさん利用客からのメッセージも張られていた。「なくなるな!」「26年間、あざっす」「Big Love」などの言葉が並ぶ。メッセージを見つめてる前川店長は「地域のためのお店作りをしてきた。地域の人たちに愛されていた。『ありがとう』と伝えたい。感謝でいっぱい」と思いを込めた。
美里店の閉店後、会社の異動により、TSUTAYAの店舗での仕事からは離れる前川店長。運営からは離れるが「本が好きなので、(どこかのツタヤへ)本を見に行くと思う。映画や音楽、本は知識や人生の豊かさにつながると思う」と話す。デジタル配信の便利さも利用しつつ、実際の店舗があることの良さも残していけたらとの思いを語った。
(古堅一樹、與那原采恵)