オレンジ、黄、青・・・カラフルな花のように開く
12月、街では一斉にクリスマスの飾りつけが始まります。沖縄では本物のもみの木や雪は見られないけれど、それでもカラフルに飾られたツリーを見るのは心躍るものです。
さて、熱帯や亜熱帯のサンゴ礁の海に入ると、実は小さなクリスマスツリーが1年中見られます!ハマサンゴなどの大きなかたまりサンゴの表面に、3cm程度のツリー型の渦巻きが2個セットで花咲くように開いています。しかも、とってもカラフル。濃いオレンジ、黄色、青、2色3色が組み合わさっていることも。これ、イバラカンザシという生きものです。
イバラカンザシは、ゴカイの仲間。釣り餌にするあの長虫状の生きものの仲間です。本体は、サンゴの石の中に空けた管状の穴に住んでいます。外側に出しているクリスマスツリーの部分は鰓冠(さいかん)といって、水中から酸素を取り込む呼吸に使うと同時に、流れてくるプランクトンを捕まえて食べる道具でもあります。その動きはとても素早く、ほんの少し指先で触れるだけで、一瞬にして穴に引っ込む!しかも、敵が穴から入ってこないようにちゃんとフタつき。よくできていますね。イバラカンザシという名前も、このフタが、かんざしの先に付いている丸い部分に似ているからだそうです。ちなみに、英語ではクリスマス・ツリー・ワーム。見た目のまんまです。
サンゴのお家でツリーを伸ばして暮らすイバラカンザシ。ちゃんとオスとメスがいて、卵や精子を水中に放って受精させ、赤ちゃんがプランクトンとして旅立っていきます。次にどんなサンゴの上で、どんな色のツリーを飾るのか、想像するのも楽しいですね。
Vol. 71 イバラカンザシ
Spirobranchus giganteus
● 目:ケヤリムシ目 Sabellida
● 科:カンザシゴカイ科 Serpulidae
● 属:イバラカンザシ属 Spirobranchus
撮影:
イバラカンザシ 2023年11月11日(奄美大島・瀬戸内町)
※本企画は今回から、動画なしの構成となります。
しかたに・まゆ 東洋大、琉球大卒、福井県立大大学院修了、東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。沖縄の海辺を考える「里浜22」や、温暖化対策に取り組む「ゼロエミッションラボ沖縄」でも活動中。