米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設に関連し、沖縄防衛局は、環境影響評価(アセスメント)の2022年度の事後調査報告書で、国指定天然記念物ジュゴンの工事海域への来遊や接近は確認されなかったと報告した。防衛局が9月末に県に提出した。同じ年度に県が実施した調査では、工事海域に近い名護市久志の沿岸部でジュゴンのふんが見つかっていた。
国の事後調査報告書に記載はなかったが、県は環境保全措置として県の調査結果を反映することや、ジュゴンの生息調査の拡充を国に対し求めるか検討している。
事後調査報告書によると、国の調査ではジュゴンについて、ヘリコプターや船による監視、海草藻場の食跡、水中録音装置による鳴き声などを調べた。工事海域でジュゴンの姿は見られず、大浦湾側の海域でも食跡や鳴き声は確認されなかったとしている。
県の調査では22年7月に名護市久志の沿岸で見つかったふんからジュゴンのDNAが検出され、今年4月に公表された。
ジュゴン保護キャンペーンセンターの吉川秀樹さんによると、12月1日に東京で行われた政府交渉で防衛省に対し、ジュゴンのふんについて見解を求めたところ、担当者からは「ジュゴンのふんであるかどうかについて判断していない」との回答があったという。
吉川さんは「県の調査結果は、ジュゴンの生息状況を示す科学的データとして重要だ。国がこの知見に対応できなければ、国際的にも批判を浴びるだろう。県のアセス審でもしっかり指摘し、保全措置を求めてほしい」と話した。
事後調査報告書は、国が実施した環境アセスに基づき、工事前の予測評価と工事後の環境への影響を比較検討し、必要となった環境保全措置や工事による総合的な影響評価をまとめたもの。22年度の報告書は、11月29日の県アセス審査会で審査された。県は審査会の答申を基に、年度内に国に保全措置要求を提出する。
(慶田城七瀬)